相手が返したくなる債権回収4つのSTEP

債権回収

これまで当サイトでは、債権回収トラブルに関する解決手法を様々な観点からお伝えしてまいりました。
債務者への連絡、消滅時効の中断、内容証明の送付、訴訟、強制執行など状況によって取るべき行動は全く変わってきます。
もっとも、こういった選択肢はあくまで債権を回収するための“手法”にすぎません。
債務者に払う気持ちがなければ回収することは容易ではありませんし、誰だって訴訟にまで発展させることは避けたいものです。
そこで今回は、“相手が債権を返したくなる進め方”を4STEPに分けてお伝えします。
この順序で進めれば、ご自身での債権回収も不可能ではありません。

相手が返したくなる債権回収-4つのSTEP

あなたは債権を回収しなくてはいけない場面に出くわしたことがありますか?
経営者の方でしたらほとんどの方が経験していることだと思います。
取引先の支払いが遅れた時、最初は「あれ?おかしいな」程度にしか捉えていなかったものが、2週間、1か月…と支払いがないまま時間が経つにつれて、「なんとかして払ってもらわないといけない」と焦り始めるでしょう。

債権回収トラブルに直面すると、
「契約書はどうなっているだろう」
「うちの会社のキャッシュフロー大丈夫だろうか」
「早いうちに弁護士に相談したほうがいいだろうか」
といろんなことが同時に頭に浮かぶと思います。
そして、「だいたいなんで電話に全くでないんだ!」という怒りに感情を支配されてしまい、債権を回収するためにすべきことを整理できず、悶々とした日々を過ごすことになります。
ここでSTEP1です。

STEP1: 債権回収トラブルは、人よりコトにフォーカスする

確実に債権を回収するために、まずは冷静になることが大切です。
債権回収トラブルが起きた場合、お金を払わない“相手への怒り”が感情を支配しがちです。
ですが、当人を攻撃したところでお金が返ってくる訳ではありません。
そうではなく、“債権が回収できていない状態”というコトにフォーカスして、一つずつ行動に移していくことが大切です。
相手への怒りの感情を持ってはいけないという訳ではありませんが、あくまで債権回収トラブルを解決するという目的に意識を向けることで、負の感情を抑えられるという効果を期待できます。

STEP2: アプローチのスタンスを決める

ご自身の心のあり方を決めたら、債務者へのアプローチのスタンスを決める必要があります。
そこで考えたいのが、人が行動を起こす際の“動機”です。
人は、何か意思決定を行う際には、“快の追求”か“不快の回避”がその動機になると言われています。
つまり「こうなりたいからこうする」のか「こうなりたくないからこうする」のかのどちらかだということです。
債権回収を進めるに当たり、このどちらに働きかけるかによって、債務者へのアプローチが変わってきます。
快の追求と不快の回避のそれぞれのアプローチを「北風と太陽」になぞらえてお話しします。

“北風作戦”は、不快の回避に着目したアプローチです。
相手に対して「なんで払わないんだ!」と強硬な態度で主張します。誰だって「なんで払わないんだ」としつこく言われたくはありません。
強い態度を相手に見せ続け、「払えと言われ続ける状態から脱したい(=不快を回避したい)」と思わせることで相手を動かす方法です。
ただ、この作戦には、強い言い方を続けてしまうことで、かえって相手が殻に閉じこもってしまい連絡が取れなくなってしまうリスクもあります。

一方、“太陽作戦”は、快の追求に着目したアプローチです。
「返せ!」と強く言うのではなく、「早く解決したほうがお互いにすっきりするじゃないですか」とか「あなたの状況も配慮した上で進めていきましょう」と相手のプライドを尊重することで「債権を支払ってスッキリしたい(=快の追求)」を相手に思わせる方法です。
こちらの方が上手くいきそうですが、実際には相手を尊重しているつもりが、あなたの優しい物言いに乗じて相手がなめてかかってくるというリスクもあります。

つまり、どちらか一方の作戦が正しいということはありません。
相手の人間性や状況に合わせて北風作戦と太陽作戦を組み合わせてアプローチしていく必要があります。

STEP3: アプローチの頻度を決める

アプローチのスタンス(STEP2)では、快の追求か不快の回避を相手の状況に合わせて使い分けるというお話をしました。
次に、どのような頻度で相手に接触・連絡するべきなのかについてお伝えします。
これについては、いくつか選択肢があるわけではありません。

「できるだけ小まめに連絡を取りましょう」

これに尽きます。債務者は連絡の間隔が空くごとに“罪悪感”が薄れていきます。
罪悪感が薄れると、自分の中で債権トラブルを正当化し始めてきます。つまり、もう要求してこないんじゃないかとか、払わなくてもいいんじゃないか、という気持ちに傾いていくわけです。そして、次第に連絡もとれなくなっていくという訳です。
北風作戦、太陽作戦に関わらず、小まめに連絡をとることで「常に見られている意識」を相手に持たせ、自分の債権の優先順位を上位に置かせておくことが必要です。

STEP4: 解決の方法を提案する

ここまで相手と連絡を取れる関係の作り方をお伝えしてきました。
ここからはいよいよ、債権を回収していくフェーズに入ります。
相手に支払意欲を起こさせる提案とは。

それはずばり「分割払いの工夫」にあります。

そもそも、債権回収トラブルにおいて相手が代金を支払ってくれない理由は、
①支払う気がないこと
②支払うお金がないこと
の2つの理由が挙げられます。
分割払いの提案は、相手に「これなら払える」という支払意欲を起こすことができるので、支払ってくれない理由の両方とも解消できる可能性があります。
もちろん、全額を回収するまで時間が掛かりますし、一括で支払ってもらって早く決着をつけたいという気持ちも理解できます。しかし、債権回収トラブルの解決は相手の支払意欲の上に成り立っているといっても過言ではないので、分割払いを考慮してあげる必要があります。

とはいえ、債権回収の話から早く解き放たれたい気持ちは相手も同じです。
そこで、いくつかの分割方法を提示することをお勧めします。
以下では、300万円の債権を例にご説明します。

債権の分割方法:4パターン

(パターン1)100万円×3回〔厚く×短く作戦〕
・自社にとっては短期間で回収できて、相手も短期間で負担から解放されるメリットがあります。
・けれど、相手によってはやりくりが大変な場合もあろうし、自社としても無理な金額を要求した結果、相手に逃げられては困ります。

(パターン2)10万円×30回〔薄く×長く作戦〕
・相手にとっては月々の負担は楽だし、自社としても一定の信用は与えてもよさそうです。相手には銀行の定期送金サービスを利用させるなどして、送金の負担感を与えない工夫もありです。
・けれど、双方ともに、いかにも長いというデメリットは否めません。

(パターン3)初回100万。2回目から20万円×10回。〔最初は多めに作戦〕
・まずは今用意できるお金で相手に頑張ってもらい、次回からは月々の収入で頑張ってもらうというやり方です。
・相手が今できる最大限の努力を示すことで、自社も一定の信用を与えられますし、相手としてもその分支払期間が短くなり、毎月の負担も軽くなるというメリットがあります。

(パターン4)20万円×12回。240万円まで払ったら、残り60万円は免除。ただし途中で挫折したら300万円まで払う。〔ニンジンぶらさげ作戦〕
・相手に毎月頑張り続けてもらうモチベーションづくりとして、8割方払ったら残りは免除してあげるというもの。
・自社にとっては、相手がそっぽをむいて0円になってしまうよりかは、一部免除というニンジンをぶら下げることで実をとるという判断です。

分割払いにもいろんな考え方があるので、相手が支払いを続けるモチベーションを保てるパターンはどれなのか、あなたが我慢できる回収期間はどれなのか、それらを擦り合わせて支払い方法を決定していきます。

債権回収は回収しきるまで終わりません

支払金額と支払期間について相手と合意に至ったとしても、まだホッと一息はつけません。
相手がどのタイミングで支払いを止めてくるか分からないからです。
ですから、支払日にちゃんと支払われているかどうか必ずチェックしましょう。そして支払いがなければ、すぐに連絡をする必要があります。これはSTEP3のアプローチの頻度と共通する話ですが、こちらからの連絡が遅くなってしまうと支払いがずるずるとずれ込み、なあなあな関係になってしまいます。
こちらが支払日翌日に、直ちに「支払いがありませんでしたので支払いをお願いします」としっかり伝えることで、相手に対して「常に見られている意識」を与えることができます。

最後に

今回は、自分自身でできる債権回収を4つのSTEPでお伝えしました。
これらの流れを要約すると、“自分の主張を一方的にするのではなく、相手の状況を理解し、整理すること”で債権を回収できる可能性がぐっと上がるということです。
内容証明の送付や裁判手続きなどの手段面だけではなく、依頼者様の状況を整理し、ネガティブな感情を前に向けて進めていくことも私たち弁護士の役目です。
弁護士に債権回収の依頼を検討される際は、ご自身の気持ちまで踏み込んで関わってもらえるのかどうかを考えてみることをお勧めします。

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ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

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私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。
また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。

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ご相談中の様子

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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