少額訴訟は債権回収トラブルにおける特効薬になりうるか?

債権回収

東京都港区の弁護士・波戸岡光太です。
債権回収において「裁判」は重要な打ち手のひとつです。勝訴すれば、支払能力はあるのに支払う気のない債務者に対して強制執行を行うことができるからです。

とはいえ最初から「裁判で勝ち取ろう!」と思う方はいないでしょう。誰だって裁判は避けたいものです。
その大きな理由は2つあります。

1つは、裁判には多大な時間と精神負担が掛かるからです。裁判に発展するほどの債権回収問題の場合、お互いに主張を争わせることになりますので、どうしても時間がかかってしまいます。ただでさえ忙しい経営者にとって裁判は大きな精神負担となるでしょう。

もう1つは、裁判を進めるために必要な弁護士費用です。民事訴訟では弁護士を立てることは必須ではありません。しかし、訴訟では専門用語が用いられたり書類の出し方にルールがあるので、法律家の助けなしでは苦戦する確率が高いと言わざるを得ません。そうすると、弁護士費用がどの位かかるのかが気になってきます。
参考ブログ:債権回収と弁護士費用

このように「裁判」は時間とメンタル、そしてお金を消耗するので、少額債権の場合、消耗するリソースに見合わないために、債権回収を断念される方も多いのが実情です。

しかし、そういった裁判を行うときのネックを解決するために用意されている制度があります。それが少額訴訟制度です。
60万円以下の金額の債権問題に限られますが、少額訴訟なら、通常裁判だと数ヶ月かかってしまう裁判を、1日で終わらせることができます。主張立証もシンプルですので、法律家ではない債権者が自ら法廷に立つことも難しくはありません。

今回は、少額訴訟について知っておくと役立つ3つの知識をお伝えします。

1.裁判所にある書式を使って、自分一人で裁判を起こせる

少額訴訟とは、60万円以下の債権の支払いを求める場合に、原則として1回の審理で解決する裁判手続です。
規模の小さな紛争を短期間で迅速に解決し、裁判を利用しやすくするために作られました。
債権者は、最初の期日までに、自分のすべての言い分と証拠を裁判所に提出します。
証拠は、契約書や合意書、領収証など、最初の期日にすぐ調べることができるものに限られます。
申立ての書式や用紙は裁判所のホームページからダウンロードできます。
裁判所HP[民事訴訟・少額訴訟で使う書式」

裁判所は、最初の期日に当事者双方の言い分を聞き、証拠を調べて、判決を下します。
判決は、原則としてその日のうちに言い渡されます。
また、相手が出廷してきて話し合いが進められる場合は、判決ではなく、分割払いでの支払い合意など、和解によって解決することもできます。

2.通常の裁判に移行するときもある

原則1回で終わらせるという少額訴訟の性質から、紛争の内容が複雑だったり、証拠調べに時間がかかる場合は、裁判所の判断で通常の訴訟手続に移行される場合があります。

また、被告として訴えられた者が、少額訴訟による審理を希望しないと申し出た場合は、やはり通常の訴訟手続きに移行してしまいます。
これが日本では少額訴訟がイマイチ広まらない理由と言えるかもしれません。どのみち通常裁判に移ってしまうのなら、少額訴訟を起こしても無駄だと思ってしまうわけです。

しかし、つねに無駄だとも言い切れません。法廷に相手がやって来て、意外なほどあっさりと債権の存在を認めることもよくあります。
少額訴訟によって相手が債権の支払いを認めてくるかどうかは、それまでのあなたのコンタクトに対する相手の反応からおおよそ判断することができます。
支払いの催促に対して言い返してくるわけでもなく、相手が先延ばしをしたり無視している状況なら、少額訴訟によって解決できる可能性があります。
債務者は自分の非を認めながらも、何らかの事情で支払いたくないだけかもしれません。もしそうならば、裁判でも債権を争ってくることはせず、少額訴訟で済ませられる可能性も十分にあります。

3.銀行口座などを差し押さえることができる

少額訴訟に限ったことではなく通常裁判にもいえることですが、裁判で勝ったとしても、相手が支払をしてこない場合があります。
そういった場合、相手の財産のありかを突き止めれば、強制執行で差し押さえることができるようになります。
差し押さえる対象となる財産として最も回収しやすいのは銀行口座です。
銀行の支店名まで把握できれば、口座番号が分からなくても差し押さえることができます。一部の都市銀行では、弁護士会照会という、弁護士会を通じた銀行への問合せ手続きを使えば、相手方の支店名まで教えてくれるようになっています。

少額訴訟に法律家は不要?

今回は、弁護士などの法律家の助けがなくても、自力で遂行することができる少額訴訟についてお伝えしました。お伝えした3つのポイントを踏まえて、少額訴訟を起こすかどうかを検討してみてください。

さて、「弁護士などの法律家の助けがなくても」と書きましたが、法的手続のお手伝いばかりが弁護士の役割だとは私は考えていません。
依頼者様の状況を整理して、冷静さを取り戻していただくことも私達弁護士の役割です。
大事なことは、感情的にならずに今すべきことを粛々と淡々と行っていくことです。
少額訴訟も視野に入れたうえで何をすべきか検討したいという方は、弁護士に相談してみるというのも一つの手段です。

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。

私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。
また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。

経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。

ご相談中の様子

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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