弁護士が教える! クレーマー対応完全マニュアル

最近は「モンスタークレーマー」という言葉にも代表されるように、クレーマー問題が社会的にも注目されるようになってきています。
そんな中で接客に携わる方々は、お客様を大切にしたい気持ちと、クレーマー対応をどうすればよいかの“はざま”で困ってしまうことが多いです。
そこで今回は、弁護士としての知見を活かして、クレーマー対応の仕方を解説いたします。

顧客とクレーマーの違い

基本的なスタンスとして、クレーマー対応では、「大切にすべきお客様」と「クレーマー」を区別して、それぞれ異なる対応を行う必要があります。

① 大切な顧客
→お客様の要望に応じて対応する。
⇒顧客満足を目指す。

② クレーマー
→自社のペースで淡々と対応する。
⇒物別れを目指す。

まるで正反対の対応です。クレーマーに対しては、「分かってもらおう」「相手の間違いを認めさせよう」という考えは捨てなければなりません。
クレーマーと分かれば、守るべきは自社です。その意味で、大切にするお客様とは正反対の対応を行うことになるのです。

顧客とクレーマーの見分け方

では、どのように顧客とクレーマーを見分けるのでしょうか。
ほとんどの場合、最初からクレーマーと分かることは少なく、お客様として対応していくうちに、次第に違和感がふくらんでいくことが多いです。
そんな時、次のような見分け方の基準を持っておくと効果的です。
それは「言い分」と「人・メンタル」に着目した基準です。

1「言い分」に着目した基準

① 自社にミス・落ち度があるか(行為)

まず、自社の行為が、お客様のどんな期待に反したのかを確認しましょう。
そこにミスや落ち度があったのならば、どの程度のレベルなのかを確かめましょう。
単なる思い違いなのか、コミュニケーション不足なのか、はたまた契約違反のレベルなのか。
自社に大きな落ち度がないのに、過剰に反応してきたら、それはクレーマーの特徴です。

② 顧客に損害が発生しているか(結果)

自社にミスや落ち度があったとした場合、
次に、それによって顧客に実際の損害が発生したかどうかを確認しましょう。
損害がないのに過剰な要求をしてきたら、それもクレーマーの特徴です。

損害には様々な種類がありますが、大別すると、
1.治療費、修理費などの具体的な出費
2.休業損害など、入ってくると期待したはずの収入の損失
3.精神的苦痛としての慰謝料
があります。
この中でクレーマーがよく主張してくるのは、慰謝料です。慰謝料は一般的になじみのある言葉でもあるので、これを言われると、払わねばならないのかなという気持ちについなってしまいがちです。
しかし、人が社会生活において嫌な思いをすることは頻繁にあるわけで、単に「許せない」とか「気分を害した」というだけで慰謝料は発生しません。
法律による救済が必要なレベルに達した苦痛に対して慰謝料が支払われるわけですが、それには専門的な判断が必要です。
くれぐれも言われるがままの要求を呑むことなく、法律の専門家に相談することをおすすめします。

③ 損害と要求が関連しているか(関連性)

損害が認められる場合、次に、要求内容との関連性を確認しましょう。
発生した損害とは関係のない要求をしてきたら、それはクレーマーの特徴です。
そもそも、損害賠償とはその人に生じた損害を回復することであって、それ以上のものではありません。
つまり、損害賠償によって相手を懲罰したり、社会的に制裁することは日本では認められていません。
ですから、要求の内容が「土下座しろ」だとか「こちらの求める謝罪文を貼り出せ」などといったものだったり、要求の方法が無理な日時場所への呼びつけ、一方的な押しかけ、執拗なメールの送信など社会常識を逸していれば、クレーマーの特徴と判断します。

このように、顧客の「言い分」に注目して、①自社にミス・落ち度があるか、②顧客に損害が発生しているか、③損害と要求が関連しているかを、順に確かめる基準をもつとよいでしょう。

2「人・メンタル」に着目した基準

顧客の「言い分」に続いて、その人の性格やメンタルに着目することが重要です。
クレーマーにもいろいろなタイプがおり、例えば
① 粗暴型
② 粘着質型
③ 説教型
は比較的多いタイプです。

①粗暴型は、大声を出したり、暴言を吐いたりします。
このタイプは人を威圧して怖がらせますが、「権威や制服に弱い」という特徴があります。
ですので、警備員を読んで視界に入れさせたり、「場所を変えて警察で話しましょう」と提案するのが効果的であることが多いです。

②粘着質型は、一見おとなしいですが、こちらの言葉や文章にからんでは難癖をつけ、いつまでも要求が終わらないことが多いです。
このタイプは、メールや電話など、対面しない状況だと強気にでてくることが多いので、複数人で対応して、実際に会って話をするなど、一定の手間をかけさせることが効果的です。

③説教型は、年配の人などが若い社員に対して、オレが教えてやろうという態度で延々と持論を振りかざすのが特徴です。
このタイプは、権限のある者や同年代の人が対応すると、プライドが満たされて解決することが多いです。

このように、クレーム問題を考える時には、その人の言い分だけでなく、その人の性格やメンタルをつかむことが大切です。

クレーマーの対応の手順

では、実際にクレーマーが現れ、いろいろな要求が始まってしたときには、どのように対応すればよいでしょうか。
具体的な対応の手順は、次のとおりです。

1.傾聴し共感する。
2.謝罪してもよい。
3.事実確認を行う。
4.解決案を提案させ、提案する。

1.傾聴し共感する

そもそも人には「話を聞いてもらいたい」という大きな欲求があります。
ですので、まずはこの欲求を満たすことがクレーマー対応の第一歩となります。
具体的には、しっかり語尾まで話を聞く、相手の話を遮らない、ということが大切です。
聴き方としても、相づちを打ったり、声のトーンを変えることで、相手を受け入れ、共感する姿勢を見せることが大切です。
共感とは、必ずしも同調することではなく、相手の気持ちを理解していることを示すことを指します。
そしてこちらが話すときは、相手の許可を得てから、話をはじめたり、質問をします。
例えば、「ご質問してもよろしいでしょうか」「ああ、どうぞ」とすることで、相手に聞く態勢になってもらうのです。

2.謝罪してもよい

「何に対する謝罪か」を明確にすれば、謝罪はしてもかまいません。
むしろ、相手への気遣いとしての謝罪はしたほうがよいです。
人には「認められたい」「分かってほしい」という欲求があり、そこを満たしてあげられるのが謝罪です。
たとえば「ご不便をおかけし、申し訳ありません」とか「お時間を取らせてしまい、申し訳ありませんでした」などです。
なかには、謝罪すると、自社の非を認めることになるから避けた方がよいという考え方もありますが、謝罪と責任は別です。
クレーマーに対しては、自社の責任を認める謝罪は行わず、あくまで気持ちを害したことへの謝罪であれば問題はありません。

3.事実確認を行う

「おかしい」とか「不適切だ」というクレームは「評価」であって、評価は必ず「事実」に基づいています。
評価は主観、事実は客観という分類もできます。
ですので、「おかしいかどうか」といった主観的な評価に振り回されるのではなく、そもそも「何があったのか」という客観的な事実を確認することが大切です。
そのためには、いつ、どこで、誰が、何を、どうしたのかを拾い出していくとよいです。
例えば、こんな感じです。
「思ったのと全然違う!」「いったことができてないじゃないか!」
→ 誰とお話されましたか。
→ それはいつのことですか。
→ スタッフはどのようにご説明しましたか。
→ どのような約束をしましたか。
→ 現在はその商品をご利用されていますか。

不当なクレームであるほど、それぞれの答えはあいまいなものになっていきます。

4.解決案を提案させ、提案する

クレーマー問題は早く終わらせたいものですが、その気持ちが先行すると、かえって事態を悪化させてしまう場合があります。
例えば、相手が何も言っていないうちに、「いくら払えばよいですか」などと持ち掛けると、「お金が欲しいとでも思っているのか」「お金なんかじゃないんだ」と逆上させてしまいます。

ですので、まずは相手に解決案を提案させて、相手の要望を聞き、相手の許可を得てから解決策を提案する順番がよいです。
もし相手の要望がお金であれば、そのお金を払うのが適切なのか、適切だとして金額をどうすればよいかを検討します。
もし相手の要望がお金でなければ、それは何なのかさらに聞き、そのうえで出てきた要望に対応できるかを検討することになります。
相手としても、自分から提案した手前、その要望の範囲内であれば、怒りを外にぶつけることなく自分で考えるようになります。

以上が、クレーマー対応の手順です。
「1.傾聴と共感」「2.謝罪」「3.事実確認」「4.解決案の提案」
混乱しそうな時は、ぜひこの手順に立ち戻ってみてください。

以上のとおり、弁護士としての立場から、クレーマーへの対応を解説いたしました。
もし対応に迷った場合や、トラブルがなかなか解決しない場合などは、弁護士にご相談いただくことで大きなヒントや解決への糸口がつかめたりします。
私もお力添えができればうれしく思いますので、どうぞお気軽にご連絡ください。

こちらの記事もぜひ参考にしていただければ幸いです。
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弁護士 波戸岡光太
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