Blog 最新記事
- 信念への共感が心をつかむ from『すごい傾聴』(良書から学ぶ経営のヒント)2024-11-15
- 「見て見ぬふり」はこうして起こる-コンプライアンス違反を防ぐための心理的アプローチ-2024-11-04
- コンプライアンス違反を防ぐ少数派の影響力2024-11-04
- アンコンシャス・バイアスがコンプライアンス違反を招く?-無意識の偏見と公正な職場-2024-11-04
- 「赤信号、みんなで渡れば怖くない」-コンプライアンスと集団的浅慮-2024-11-03
カテゴリ
パワハラ上司にならないために、“怒りとつきあう”方法をマスターしましょう。
パワハラをはじめハラスメントに関する問題は日々いたるところで耳にします。
社内でのハラスメント問題は決して対岸の火事ではなく、全ての会社に潜んでいるといっても過言ではありません。
パワハラに陥りがちな上司の頭の中を覗くと、教育的指導よりも怒りが先に来ていることがほとんどです。教育的指導のようで、実はこみあげた怒りに任せているのです。
やる気がないように見える部下や、自分で考えることを怠っているような部下に対して、感情的になって怒りやイライラをぶつけてしまうわけです。
すると、最初は「仕事ぶり」に対して怒っていたはずが、だんだんと「部下そのもの」に対して怒るようになっていき、攻撃の対象がコトからヒトに移り、パワハラが生まれることになります。
「だからお前はダメなんだ!」とか「お前なんかいらない」などは人格を否定する発言であり、典型的なパワハラです。
前回のブログでは、パワハラの定義である「業務の適正な範囲を超えた行為」について解説しましたが、
今回は、そのパワハラを生み出す「怒りの感情とどうつきあうか」についてお伝えします。
突発的な怒りの感情を落ち着ける必要性
なぜ怒りの感情の状態で部下と向き合ってはいけないのでしょうか。
それには「怒る」と「叱る」を対比させるとわかりやすいです。
怒る:頭に血が上った状態で、いわば怒りたいから怒っている状態。
→自分の気持ちを吐き出すことが目的となっています。
叱る:頭は冷静な状態で、相手に緊張感をもたらすことが必要と考えての行為。
→相手のために、その言動を正すことが目的となっています。
つまり「怒る」は、正しい判断ができない状態で自分の感情をぶつけているだけなので、それでは部下に適切な指導はできないのです。
このように考えると、会社からパワハラをなくすためには、「怒る」を「叱る」に変えていくことが必要だということが分かります。
「怒る」を「叱る」に変えるために上司がやるべきこと
部下からあがってきた不十分な報告に、イライラしてしまうケースを仮定します。
STEP1 反応しない
まずは、「反応」ではなく「対応」することが何より大事です。
起きた出来事に刺激されて反応し、怒ってしまうことは、相手のためを思った行動を捨てるも同然ですし、その後の自分の行動を選択することができません。
怒りにうまく対応するために、まずは反応しないことを意識しましょう。
STEP2 認識する
次に、イライラしている自分を「認識」します。
突発的な反応を回避できた後は、少しゆっくり自分の感情と向き合います。
この時のイメージは、いわば自分から幽体離脱して、自分を斜め上から眺める感じです。
「あー、今この自分はイライラしているな」と、もう一人の自分として認識することで、次の行動を冷静に選べるようになります。
STEP3 深呼吸する
それからゆっくり深呼吸します。シンプルですが、とても重要です。
それも、息をはいてから吸いましょう。呼=はく、吸=吸う、の順番です。
頭に上った感情を、肚(はら)の下に落としていくようなイメージです。
息を吐き、力を抜き、新鮮な空気を取り込んでいると、やがて自分が「落ち着けたな」と思えるときがきます。
STEP4 コトにフォーカスする
ここまできて、ようやく部下に働きかけることになります。
そこでは、ヒトよりコトにフォーカスした質問をします。
「なんで君はいつもこうなの?」ではだめです。これは人を対象とした反論を許さない問い詰めです。
部下からすると、自分の能力や資質を疑われたと感じ、「すみません」としか言えなくなります。
そうではなく、その出来事が「なぜ起きたのか?」「何が障害となったのか?」と、あくまでコトにフォーカスして、部下が問題に向き合えるように質問することが大切です。
そうすれば、部下も原因や障害を考え、説明しようとしますし、上司としてもその説明から問題点を見抜く手がかりを得られ、意義ある対話を行うことできます。
STEP5 問題解決の仲間になる
最後に、問題を一緒に解決する仲間となります。
先ほど部下にした質問で問題点が浮かび上がってきたら「それを一緒に解決しよう」というスタンスで話を進めます。
例えば、クレームの報告が部下から上がってきて、原因を聞いたときに「お客様に連絡するのを忘れてしまって」という返答が返ってきたとします。
それには「今後忘れないようにするためには何ができる?」と質問することで、解決策を一緒に考えることができます。
また、「業務量がオーバーしていて、抜けてしまいました」という返答でしたら、そのような部下の状態を知るきっかけになるので、とるべき対策も変わってくるでしょう。
大切なことは、問題の原因を部下の能力に求めて一方的に改善や対策を求めるのではなく、適切な対話を通じて部下の本音を引き出し、問題の本質をつかみ、ともに解決する仲間になるということです。
いかがでしょうか。
ここまで「怒る」を「叱る」に変える方法を5段階のステップに分けて伝えてきました。
いずれも自分との向きあい方、感情とのつきあい方で、部下との関係性を変えていくことができる方法です。
現在、パワハラへの対応が会社の重要なテーマとなりつつありますが、パワハラをなくすためには、その根源にある怒りという感情といかに向き合い、うまくつきあうかが重要となります。
私はパワハラに関する講義やセミナーを企業からご依頼を受けて行っていますが、
法律の話にとどまらず、怒りの感情とどう向き合うかというテーマについてもていねいに解説しています。
ハラスメントトラブルへの対応を急いでいらっしゃる企業の皆様は、ぜひ一度ご相談ください。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。
経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。
私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。
また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。
経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。
波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
東京都港区赤坂3-9-18赤坂見附KITAYAMAビル3階
TEL 03-5570-5671 FAX 03-5570-5674