「社員がパワハラだと言ってきた!」そのとき会社がとるべき対処法と責任は?

日々いたるところで耳にするパワハラが、あなたの会社で発覚してしまった!
パワハラ問題の勃発。そのとき、社長のあなたなら、どうしますか?

パワハラをはじめ、ハラスメントに関する問題は決して対岸の火事ではなく、全ての会社に潜んでいるといっても過言ではありません。
パワハラ問題への対応は、なによりも迅速さが求められます。
もしもの時に備え、相談できる相手を見つけておくことが大事です。

さて、どんなときにパワハラ問題が明るみに出るのでしょうか?
様々なケースがありますが、長年ご相談を受けるなかで多いのは次のようなケースです。

・パワハラを受けている当事者から告発される
・社員面談で、「実は…」と心情と経緯を吐露される
・社員が休みがちになり、問題が発覚する、などです。

いずれのケースでも、パワハラ問題が発覚した場合には、迅速かつ適切なヒアリングが不可欠です。
そこで、今回はヒアリングにおける注意点と対処法を中心に説明します。

なお、パワハラ行為の定義や類型的なパターンについては、こちらの記事で触れていますので、ご参照ください。
「まさか自分がパワハラ上司? 一体どこからパワハラなのか?」

1 パワハラ行為を受けている当事者へのヒアリングで気をつけたいこと

パワハラ問題の速やかな解決のためには、初動の対応がカギです。

1-1 ヒアリングのポイントは具体的な事実を押さえること

「ひどいことをされました」とか「暴言を吐かれました」という訴えがご本人からあった場合、
気持ちに配慮することは大切ですが、それだけで分かったつもりにならず、実際にどんなことを言われたのかとか、具体的にどんな扱いを受けたのかなど、できるだけ具体的な事実を聞き取るようにしましょう。客観的な事実を押さえることが大事です。

当時の様子をVTRで再現してみるつもりで、どんなことが起きていたのかを、ありのままに話してもらい、実際の状況を共有することが重要です。

例えば「お前は人として終わっている」とか「使えない人間だ」などという発言内容や具体的事実を聞き取り、記録することで、会社としても正確な判断ができるようになります。
人の記憶は、時間の経過とともにあやふやになっていくので、できるだけ早い段階でヒアリングをしておきましょう。

1-2 パワハラ調査の約束をしても、処分をするとの約束しはしない

パワハラの告発は大変勇気がいることです。
パワハラを受けたと感じた社員には、精神的にも多大な負担がかかっていますから、まずは話してくれたことへの感謝や労いの言葉をかけてください。
そして、事実確認の調査などの対応を約束することも大事です。
しかし、パワハラ行為を訴えられた社員のヒアリングや関係者のヒアリングも当然必要になります。今後の調査で初めて明らかになる事柄も出てくるでしょう。
ですので、パワハラの告発を受けた時点では、処分をすることまでの約束はしないよう気をつけてください。

2 パワハラ行為を訴えられている側の社員へのヒアリングで気をつけたいこと

会社の立場は中立であることを、最初にしっかりと伝える

パワハラ行為だと訴えられた人にとっては、会社のヒアリングや事情聴取は尋問のように受け取られがちです。
聴取に呼ばれたこと自体が、罰せられているような気分になることもあります。
しかし、会社はあくまで中立の立場であり、当事者のことをまだジャッジしていないことを伝えましょう。

そのうえで、あくまでも事実の調査確認だけを行うことを説明します。
「何を言っても、会社は自分が悪いという前提で話をしてくる」という心理状態にさせてしまうと、客観的に非がない場合でも、会社を辞めてしまうこともあります。
大事な社員を失う結果にならないよう、十分な注意を払いましょう。

3 事実確認後の対応策と注意点

ヒアリングの結果、問題行為が判明する場合と判明しない場合、
それがパワハラと認定できる場合と認定できない場合、はたまた認定が微妙な場合があります。
ここでは典型的なケースをご説明します。

3-1 問題行為が判明し、パワハラと認定できる場合

これは比較的解決しやすいパターンです。
具体的な処分(減給・降格など)は、社内規則に沿って決定することですが、今後、同じようなパワハラ行為、問題行為を再発させないための方策を講じる必要があります。
防止策を曖昧にしたまま、部下が上司の謝罪を受け入れるだけで終わってしまうと、根本的な解決にはならないため、また再発してしまう可能性が高まります。

3-2 問題行為は判明したものの、パワハラと認定できるか微妙な場合

一番多いケースです。
認定の難しさの背景には、上司側に悪意が見出しにくいことや、「叱り」や「怒り」の感情自体は誰もが持つものだということが挙げられます。
そのため、上司の問題行動について、感情や行動を自らコントロールできているかということについて、振り返り、自分と向き合ってもらうようにしましょう。
なぜ部下の対応をおかしいと考えるのかを聞き取った上で、その部下の人格を否定するのではなく、起きている状況をどのように改善するかという考え方をしてもらう必要があります。

また、パワハラと認定しきれないからといって、何も問題がなく従来どおりの職場に戻っていいということにもなりません。
従業員同士のコミュニケーションがうまくいっておらず、職場環境に問題があること自体は明らかになったのですから、職場の関係改善、従業員の行動改善に向けた取り組みが必要です。

「怒り」という感情の向き合い方についてのブログも参考にしていただければと思います。
「パワハラ上司にならないために、“怒りとつきあう”方法をマスターしましょう。」

3-3 双方の認識が異なり、事実が判明しない場合

ヒアリングをしたけれども、水掛け論になってしまい、そもそも何が事実か分からないこともあります。
事実認識が違ってくる原因としては、そもそも当事者へのヒアリングが甘い可能性があげられます。

例えば「暴言を吐かれた」というケースでは、
「暴言」といってもそのレベルや程度は状況や受け取り手によって違うため、事実認識のずれが生まれやすいと言えます。
そのため、「暴言」があったかどうかという漠然とした表現ではなく、具体的な発言や客観的な事実として何があったのかというヒアリングをする必要があります。

言いかえると、具体的にどんな発言をしたのかということを、複数の社員からヒアリングしておけば、会社も上司も事実を認識しやすくなるといえます。

逆に、「暴言を吐かれた」「ひどいことをされた」「人格否定された」とパラハラを訴える場合でも、丁寧にヒアリングを行っていくと、具体的な発言が出てこないこともあります。

パワハラは、「どんな前後関係の中で、どんなやりとりがあって、どんなふうに言われたのか」を明確にしていく必要があり、そうでないと、会社として適切な対応がとれません。
冒頭にもお話ししたように、時間の経過とともに、具体的だった記憶も風化してあやふやになっていきます。
そのため、パワハラは初動時に適切な対応を取ることが肝心です。

4 今後に向けて

2019年5月、参議院本会議で「労働施策総合推進法」が改正され、パワハラ防止策を企業が講じることを義務付ける、いわゆるパワハラ防止法が成立しました。
「パワハラ防止法成立にあたって、企業が準備すること」

パワハラへの対応は、企業人事において重要なテーマとなりつつありますが、パワハラ問題にまだ直面したことがない企業も多いかと思います。
顧問弁護士としてのアドバイスはもとより、企業研修や勉強会も行っていますので、お力添えできることがありましたら、ぜひご連絡ください。

経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
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