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パワハラを相談されたときに、してしまいがちな会社の誤った対応とは?

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
中小企業をもりたてるパートナーとして、企業理念や経営者の想い、事業を理解した上で法的アドバイス、対外交渉、リーガルチェックを行うことをポリシーとしております。これまでの法律相談は1000件以上。ビジネスコーチングスキルを取り入れ、顧問先企業の経営課題・悩みをヒアリングし解消するトリガーミーティングも毎月行っています。
ある日、自社の社員が「パワハラを受けた」と相談してきたとしたら、社長のあなた、もしくは相談を受けた社員は、正しく対応することができるでしょうか?
以前の記事で述べたように、大企業では2020年6月から、中小企業では2022年内から、いわゆる「パワハラ防止法」が施行され、企業は職場でのパワハラ防止策を設けることが義務付けられます。
この法律に従わないと、厚生労働省から指導を受けたり、企業名が公表されたりする場合もあるとされています。
しかし、実際にパワハラが起こったときや相談を受けたときの対策がすでにマニュアル化できて完備されているという企業は、まだまだ少ないのが現状です。
今回は、社員からパワハラの悩みを訴えられたときに、思わずとってしまいがちな典型的な誤った初動対応についてご紹介します。
典型的な誤った初動対応
1. 上司を呼び出して「どういうことなんだ」と問い詰める
パワハラ被害を訴える方の気持ちに共感するのは大切ですが、相談者の述べている内容が真実だと即断するのは禁物です。
もちろん、疑えといっているのではありません。
一方当事者として、つい誇張してしまったり、イメージ先行でパワハラだと表現している可能性があるということです。
大切なことは、相談者の気持ちに寄り添い共感すると同時に、何が事実なのかを見極めるために、中立冷静な観点を持つ必要があるということです。
そのために、パワハラをしたと訴えられている上司に対しても、先入観のない態度で接しましょう。
2.「若い時は、それで成長するものだ」などと自分の意見を押し付ける
相談を受けた側(会社側)には、共感しつつも実際に何が起こっていたのかを調査する役割があります。
それなのに、相談者から求められていない自分の経験や価値観を伝えても、相談者の抱える悩みを解決することにはつながりません。
「俺の若い時はもっとひどかった…」などという話はもってのほかです。それ自体がパワハラの一環と捉えられてもおかしくないほどです。
まずは「聴く」。評価を下したり意見を言う前に「傾聴する」を心がけてください。
3.共感するだけして、アクションしない
パワハラへの対応が慣れていなかったり、優先したい仕事があるときなどに、ついやってしまいがちなのが、対応を先送りにしてしまうことです。
「そのうち考えておくよ」とか「近いうちに検討しておくよ」という言葉はよく使いがちですが、「今日のいつかは明日もいつか」です。永遠にその日は来ないと答えているのも同然です。
速やかな事実確認を行わずに対処を後回しにしていると、苦悩を抱えてパワハラを訴えている社員が抱えるストレスは大きくなっていくばかりです。
「誰とどうやって検討するのか」「どれくらいの期間で対処するのか」を伝えて、会社としての信頼感を与えることも、パワハラの悩みを訴えられた際にとるべきアプローチです。
今後に向けて
いかがでしょうか。会社として、パワハラの訴えに対処する際に心がけたいのは、「何があったのか」「何が起きているのか」を迅速かつ冷静に調査することです。
大切なことは、とりあえず事態の収拾をつけることではなく、起きたもしくは起きている出来事を正しく見極めることです。
また、パワハラ問題が発生するのは、個人の問題だけとは言い切れません。
パワハラはその行為を行った社員だけではなく、会社も損害賠償責任を負うことになる可能性があります。社員だけではなく会社を守るためにも、パワハラの防止策を事前にシミュレーションしておくことが重要です。
さらに、パワハラかどうかを認定することだけに汲々とするのではなく、職場がそういった兆候が生まれやすい環境になっていないかについても検討することが必要となります。
私は顧問弁護士としてパワハラについてのアドバイスはもちろん、企業研修や勉強会も行っています。パワハラ対策への懸念がある企業様はお気軽にご相談ください。
経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
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