リモートワーク(テレワーク)で気をつけておきたいパワハラとは?

新型コロナウイルス感染拡大に伴って、これまで導入を見送ってきた企業も次々にリモートワーク(テレワーク)を導入するようになってきています。
そんな中、「リモートワークになってパワハラ上司と顔を合わせなくなってよかった」という声がSNSなどで上がっているようです。

たしかに社員同士が物理的に離れていると、パワハラも起こりにくいように思えます。
しかし、大多数の会社は、リモートワークを導入してまだ間もないです。
会社も上司もリモートワークに慣れていないために、一時的にパワハラが目立たなくなっただけとも考えられます。

企業経営者の方も、リモートワークにおけるパワハラ事例というのはあまり聞いたことがないかも知れません。
しかし、リモートワークになってもパワハラは起こり得ます。
それにリモートになると、パワハラだと感じている社員がそのことを会社に報告しづらくなり、溜め込んでしまう可能性もあります。
今回は、弁護士の視点からリモートワークにおけるパワハラの可能性とその防止策について解説します。

リモートワークでのパワハラにはどんなものがあるのか?

それでは、リモートワークで起こりうるパワハラにはどのようなものがあるのでしょうか?
一般的にパワハラは次の6類型に分かれるとされています。

1.身体的な攻撃(暴行や傷害)
2.精神的な攻撃(侮辱や暴言)
3.人間関係からの切り離し(隔離、仲間外れ、無視)
4.過大な要求(業務上明らかに不要だったり、遂行不可能なことを強制する)
5.過少な要求(不合理に程度の低い仕事を命じたり、仕事を与えない)
6.個の侵害(私的なことに過度に立ち入る)

これらは一般的な職場環境で起こりうるパワハラの典型例といえます。
これらのうち、リモートワークでも起こりうるパワハラですが、

1.身体的な攻撃(暴行や傷害)
これはリモートワークになることで減りそうです。そもそも物理的な接触がなくなるためです。

もっとも、
2.精神的な攻撃(侮辱や暴言)
これは、直接顔を合わせるのに比べると、オンライン会議やメールでは起こりづらくなりそうです。
しかし、PC越しに問題発言を投げかけてはいけませんし、メールなどで人格をなじってはいけません。

また、
3.人間関係からの切り離し(隔離、仲間外れ、無視)
これも、リモートワークの環境を利用した仲間外れやメンバー外しということならばパワハラとなりえます。

それ以外についても、リモートワークになっても十分起こる可能性はあります。
リモートだからといってパワハラの基準が変わるわけではないのです。

リモートワークで想定されるパワハラ事例

先ほど挙げたパワハラ類型の中から、リモートワークの際に最も気を付けなければならないもののひとつは、
6.個の侵害(私的なことに過度に立ち入る)です。

リモートワークになると、仕事とプライベートの境目が曖昧になりがちです。
そのため、上司が気づかぬ間にプライベートの部分まで踏み込みこんできてしまうことが起きかねません。

実際に起きたケースでは、上司が部下に
「お前、そんな部屋で仕事できるのか」と、言ってしまったものがあります。

この一言も問題ですが、こういった発言が徐々にエスカレートしたり蓄積することで、プライベート領域に過度に踏み込んでしまい、イエローカードがレッドカードになっていくリスクが高まるといえます。

その他にも、オンライン飲み会への勧誘も気を付けたいところです。
表面上は義務にしたり強要はしていないにせよ、断りづらい雰囲気をだしたり、オンライン飲み会での参加者だけでプロジェクトを進行させる決定をしていくのは問題です。
これは6だけでなく、3にもあたりそうです。

また、上司の監視がしつこくて、頻繁に業務報告を求めてきたりだとか、過度に返信を要求してきたり、業務時間内に終わらないような一方的な指示をだすことがあれば、それも問題です。
これは6の他に、4.過大な要求にもあたる可能性が出てきます。

その他にも、メールやチャットでは相手を責めるような文体は避けるべきですし、
電話やオンライン会議では口調や言葉遣いに気を付けたいところです。
リアルで会っていない分、言葉や音声が独り歩きし、受け手に思った以上のダメージを与えることは十分に起こり得ます。

また、直接に非難したり攻撃したりする意図がなかったとしても、メールやチャットでは自分の意図と違った印象を相手に与えることがあります。
例えば「やっといて。」という指示一つにしても、送った上司は普段通りの言葉のつもりでも、リモートで顔を合わせていないと部下にとってはニュアンスが分からず冷たく感じるかもしれません。
相手の温度感が測りづらいという点では、リモートは部下がパワハラと感じやすい環境といえるかもしれません。
ツールごとの特性に応じた、適切なコミュニケーションスキルを身に着けておきたいところです。

このように、リモートワークという新たな勤務形態の広まりとともに、これまであまり想定してこなかった形でのパワハラが起こりうるので、注意が必要です。

リモートパワハラを未然に防ぐための対処法は?

一斉に普及し始めたリモートワークですが、リモートワークに慣れていない企業経営者は、どのように社員の業務を管理すればいいのか分からず戸惑っていることと思います。

というのも、部下が目の前に見えないというこれまでにない状況で、従来型の上司自身もどう振る舞えばよいかが分からないでいる方が多いからです。

これまでの上司であれば、目の前で部下を見て、仕事をこなしていなければ注意すればよかったものの、今はそれができないために、たとえ部下がリモートワークでしっかりやっていても、本当にそうなのかが分からず、強く言ったり、不適切な指示をしてしまう上司が出てきてしまうおそれがあります。

ですので、企業経営者のとるべき対策としては、リモートワークをする上でのルール作りを会社がしてあげることが大切です。

例えば、仕事始めと仕事終わりにコミュニケーションを取ることであったり、進捗を報告する時間帯や頻度などの報連相のルールをリモートワーク用に作ることで、上司が部下に必要以上に介入することを避けられることができます。

厚労省もQ&A集や就業規則のモデルなどを示しており、参考になります。
テレワーク総合ポータルサイト

まだしばらくはこの状況が続くと思われます。
また、状況が収まっても、一度広まったリモートワークがなくなることはありません。
企業としては、これを機に従来型の管理体制を見直すべきなのかも知れません。

会社の労務、人事についてお困りでしたらぜひご相談ください。
中小企業の経営者に寄り添う弁護士として、一緒にベストな選択を考えていければと思います。

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企業のためのパワハラ対策

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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