社宅使用契約書のリーガルチェックポイント

会社が建物やマンションを借り上げ又は所有し、従業員に社宅として利用させることは多くあります。
会社としては福利厚生の一環として行うものですが、従業員にとっては生活の本拠ともなるため、使用方法や退去時にもめてしまうこともしばしば起こります。
そこで今回は、社宅使用契約書についてのリーガルチェックポイントを解説します。

1 従業員の負担額を低額にする

社宅という名目であっても、従業員の負担する使用料が、建物所有者への家賃や近隣の家賃相場と変わらない場合は、通常の建物賃貸借だと評価され、借地借家法が適用されることになります。そうすると、雇用関係が終わったとしても、さらに「正当事由」がない限り、会社は従業員に退去を求めることができなくなります。
ですので、家賃の相当部分を会社が負担し、従業員の利用料は低く抑えることで、実質的にも福利厚生の実態を持たせて、借地借家法の適用がないようにすることが必要です。

2 使用規則を定める

とくに借り上げ社宅の場合は、会社としても所有者の意向に従わなければならず、また近隣住民との関係も良好に保ってもらう必要があります。
ですので、従業員に対しては、自宅とはいえ、あくまで会社が借りている家を利用しているという意識を持ち続けてもらうよう、入居者や利用者の範囲の制限、騒音防止や生活音の配慮、ゴミだしルールや駐車場・駐輪場の利用方法の遵守、造作や備品の丁寧な扱いの実践などといった、使用規則やルールを定めておくようにしましょう。

3 退去時のルールを定める

従業員の退職に伴って、社宅からも退去することになりますが、その場合の原状回復義務の範囲や退去時期の設定、さらには万一連絡がとれなくなったりした場合の措置も定めておくようにしましょう。
もっとも、従業員が退職して、社宅を利用する権限がなくなったからといって、会社は当然に社宅内に入り、荷物を片づけたり処分していいことにはなりません(自力救済の禁止)。
ですので、退去に向けての手続きや法的措置に進む場合の段取りを定めておくようにしましょう。

以上のように、社宅契約書で注意すべきリーガルチェックポイントを整理しました。
入居時から従業員とのトラブルを想定するのはあまり楽しい作業ではありませんが、備えあれば患いなし。ぜひ参考にしてみてください。
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