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メンタル問題での休職をめぐる会社の対応ポイント
近年、うつ病をはじめとしたメンタル問題(メンタルヘルス不調)で会社を休みがちな社員に対して、企業としてどのように対処すればよいのか迷うケースが増えています。
欠勤が続くと、次に考えるのが「休職」です。しかし、どのタイミングで休職となるのか、休職中の扱いはどのようにすればよいのか、復職についてはどう考えればいいのか、それぞれ悩みどころが満載といえます。
そこで今回は、メンタル問題での休職をめぐる会社の対応ポイントを解説します。
目次
1 休職の規程(就業規則)をメンタル問題に対応できるよう見直す
(1)休職の要件
そもそも休職は、法律上の制度ではなく、一定期間働けなくなった社員に対して、会社がすぐに解雇するのではなく、しばらく様子を見ましょうという「解雇猶予措置」の性質をもつものです。
ですので、どのような場合に休職にするのかは、会社が自由に設計できるものです。
これまでは交通事故だとか大病を患っての長期入院などを想定して、「一定期間連続して欠勤した場合」には休職とすると定めていることが多かったです。
けれども、メンタル問題の場合は、欠勤と出勤を繰り返したり、早退や遅刻が多かったりと、必ずしも「連続欠勤」にはならないことが多いです。
ですので、「〇か月間に〇日以上の欠勤」とか「欠勤日から〇か月経過しても、その原因となった傷病が治癒しない場合」に、「会社が休職を命ずることができる」と定めて、会社が総合的に判断して休職を命じる権限があることを明記するようにしましょう。
(2)休職中の決めごと
休職は、本人が労働から解放されて自由に過ごすための期間ではありません。あくまで、復職に向けて治療・療養に専念し、回復を目指してもらう必要があります。
これも、事故や入院のケースであれば、当然に治療に専念するほかないわけですが、新型うつ病など、職場から離れれば心身ともに問題はなくなるというケースでは、扱いが難しいです。
リフレッシュしてもらうことも必要でしょうし、かといってバカンスをエンジョイしているのも問題です。
休職期間中の療養専念義務を明記するとともに、月に1~数回は、療養の状況について報告するよう求めるようにましょう。
その他、休職期間中は無給とすること(ノーワーク・ノーペイの原則)、勤続年数に参入しないことなどを定めておきましょう。
※健康保険等に加入している場合は、傷病手当金として、最長1年半の間、給与の3分の2の額が支給される公的制度があります。
※無給の場合は、日ごろ給与から控除している社会保険料の本人負担分を、別途本人に払ってもらう必要があるので、そのことも伝えておくようにしましょう。
2 復職の手続・段取りを定める
(1)医師とコミュニケーションをとれるようにする
これも、事故や入院のケースであれば、その治療が完了しさえすれば、またもとのように復職できるのが通常でしょう。
もっとも、メンタル問題の場合は、治ったのかどうかが本人の感じ方次第であったり、自宅では快調だが職場に近づくと悪化したりなど、判断が難しいところです。
そうすると、本人の意向次第で記載内容が変わってしまうような、数行だけの主治医の診断書一枚では、会社としても復職を認めてよいのか分かりません。
主治医としても、本人がどのような職場環境でどのような業務に従事するのか分からなければ、復職できるかどうかの判断も難しいでしょう。
ですので、会社としては、主治医に対してヒアリングすること(回復状況、就業上注意すべき事項、悪化や再発の可能性など)について本人の協力を得られるようにしておくほか、会社での仕事を理解している産業医など会社が指定する医師への受診を命じられるようにしておきましょう。
定め方としては、就業規則はじめ社内規程に盛り込んでおくか、休職の際にその従業員と個別に合意書を結んでおく方法があります。
(2)復職の可否を客観的・総合的に見極める
休職事由が消滅したとき、つまり病気であれば「治癒」したときに、復職に進むことになります。
もっとも、一言で「治癒」といっても、メンタル問題の場合は、(1)のように判断が難しいことが多く、医師の多角的な診断・意見をもとに、最終的には会社が判断権を持つことになります。
その際の判断材料としては、①本人の意欲がどうか、②時間どおりに通勤できるか、③通常業務ができるか、④それを継続できるかなどといった要素を考慮することになります。
また、復職までの段階的なステップが必要な状況であれば、リハビリ勤務を導入することも検討するとよいでしょう。
例えば、試し出勤、短時間勤務、負担の軽い作業から始めるなどといった配慮があります。
※厚労省・中央労働災害防止協会「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
さらに、メンタル問題では、いったん復職したものの、また再発することも多いので、「復職後〇か月以内に同一又は類似の疾患で欠勤する場合」などには、会社は復職を取り消せるようにしておく必要もあります。
残念ながら復職に至らない場合は、解雇ではなく、「自然退職」となるように定めておきましょう。
以上のように、メンタル問題での休職をめぐる会社の対応ポイントを整理しました。
就業規則など社内規程を見直す機会にしていただくほか、現に起きている場合は、その従業員と合意書を取り交わす際に参考にしていただければと思います。
私は日ごろ顧問弁護士として、社内規程の見直しに際してのアドバイスや文書作成のサポートを行っており、
また、実際にメンタル問題をかかえる従業員への接し方や対応について、経営者の方と情報共有しながら対応しています。
丁寧にヒアリングを行い、貴社の実務に即した対策や対応をご提案いたしますので、お気軽に問い合わせください。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
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弁護士 波戸岡光太
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