フリーランス新法とは?背景や対象者・下請法との違いについても解説!

フリーランス新法とは?

フリーランス新法とは、フリーランスと発注事業者との取引をより適正にし、働く環境の向上を目指すために制定された法律です。

この法律は、発注事業者に対して、契約内容の遵守や透明性を確保するよう求めています。
2023年2月に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」の名で国会に提出され、4月に可決成立、5月12日に公布されました。
今回の法案の成立により、2024年の秋頃には施行される予定です。

この法律の特徴は、フリーランスが安定した環境で働けるよう、発注事業者に対して一定のルールを設けていることです。総じて、この新法はフリーランスにとって歓迎すべき変化といえるでしょう。

 そもそもフリーランスとは?

フリーランスとは、特定の企業や団体に所属しないで働く人たちのことを指します。
彼(彼女)らは企業や団体から直接業務を委託され、その仕事に対して報酬を受け取ります。

フリーランスは労働基準法の対象外となるため、雇用契約を結んだ労働者よりも取引で不利な立場に置かれがちです。たとえば、雇用されている労働者には最低賃金や労働時間、安全基準といった法的保護が整備されていますが、フリーランスはそれらの保護がありません。

ですので、フリーランスで働く際には、しっかりとした契約書の作成や、自分自身でのリスク管理が不可欠となります。

フリーランス新法が制定された背景

他方、日本の労働政策は、長らく企業による雇用に焦点を当てて発展してきました。その影響もあり、フリーランスは従来、不公平な取引や不利な条件に直面することが多かったです。

実際、2020年の調査によれば、フリーランスの半数以上が取引先との問題を経験しています。内訳を見ると、4割が報酬の未払いや遅延などのトラブルでした。さらに、約3割はトラブルを避けるために、積極的な交渉をせず仕事をそのまま受けたり断ったりしていました。

加えて、取引先からの書面での業務説明が不十分だと感じているフリーランスは多く、とくに一つの企業だけと取引するフリーランスが多いので、そうすると発注者に依存せざるを得ず、トラブル解決が難しい状態が続いています。

現在、フリーランス人口は460万人を超え、就業者全体の割合も高くなってきており、このような背景から、フリーランスの労働環境の改善が急務となっており、フリーランス新法の制定が進められました。

 フリーランス新法の対象者

フリーランス新法では、「特定受託事業者」と呼ばれる人が、フリーランスとして新法の適用対象となります。

これは、商品を作る、情報を整理して成果物を作る、あるいは特定のサービスを提供するような仕事を受託する人たちのことを指しますが、大事なポイントとして、従業員を持っていないことが要件となっています。

他方、フリーランス(特定受託事業者)に対して、仕事を発注する企業や個人を「特定業務委託事業者」と呼びます。彼らは従業員を持っていることが要件となっており、この点でフリーランスとは違っています。ここでいう「従業員」は、法人であれ個人事業主であれ、継続的に人を雇っている状況を指します。
※従業員を持たない「業務委託事業者」も、一部新法の適用があります。

下請法との違いは?

フリーランス新法と下請法。この二つはよく比較される法律ですが、主な違いは適用範囲にあります。

下請法は基本的に資本金が1,000万円を超える親事業者とその下請事業者の関係に焦点を当てています。しかし、フリーランス新法は資本金に関する制限はありません。そのため、小規模な事業者や個人事業主もこの法律の範囲に含まれ、保護を受けることが可能です。

こうして、フリーランス新法の存在によって、従来の下請法ではカバーできなかった多くの事業者が、新たに保護の対象になります。

この違いを理解することで、自分がどの法律に基づいて権利を主張できるのか、また、どのような義務があるのかが明確になります。
どちらの法律も、事業者間の適正な取引を促進する目的で制定されていますが、適用範囲の違いがその活用方法に影響を与える点は非常に重要です。

フリーランス新法によってフリーランスの労働環境がどう変わるのか

フリーランス新法の施行は、フリーランスとして働く人々に重要な変化をもたらすことが予想されます。
具体的には発注事業者には以下の義務が課されます。

①書面等による取引条件の明示
業務委託をした場合、書面等による「委託する業務の内容」「報酬の額」「支払期日」等の取引条件を明示することが必要になります。

②報酬支払期日の設定・期日内の支払
発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内の報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払うことが義務化されます。

③ 禁止事項
継続的業務委託をした場合に、受領拒否、一方的減額・返品などが禁止されます。

④ 募集情報の的確表示
広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際には、 虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはならず、内容を正確かつ最新のものに保たなければならないとされます。

⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮
継続的業務委託について、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、フリーランスの申出に応じて必要な配慮をしなければなりません。

⑥ハラスメント対策に係る体制整備
フリーランスに対するハラスメント行為に関する相談対応のための体制整備などの措置を講じることが必要です。

⑦ 中途解除等の事前予告
継続的業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合は、原則として30日前までに予告しなければなりません。

このような法的保障が増えることで、フリーランスの働きやすさや安定性が大きく向上すると期待されます。悪質な取引やトラブルから自分自身を守るための具体的な方法が増えるのは、今後のフリーランス業界にとって、非常にプラスの影響を与えるでしょう。

フリーランスと良い関係を築くために

フリーランス新法が施行されることで、業務の発注者は契約内容の遵守や透明性を確保するよう求められることになります。

つまり「フリーランス新法」に対応するために、契約書の内容を見直す必要がでてきます。
特に、納期や報酬、業務内容などが明確に書かれているかを確認することが重要です。

もしそういった手続きに不慣れであれば、ぜひご相談ください。法的背景や必要な項目についてのアドバイスをさせていただきます。また、既にフリーランスと何らかのトラブルが発生している場合も迅速な対応が可能です。

法律の変更は、どの企業にも影響を与える可能性があります。準備が整っていないと、後々大きな問題に発展することもあるでしょう。事前の対策が何よりも大切ですので、波戸岡へのご相談をお待ちしています。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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