休業手当を払うべきか否か?をめぐる会社の対応ポイント

新型コロナウィルスの対応にどの企業も頭を悩ませていますが、大きな課題の一つに、従業員への「休業手当」の問題があります。
営業停止を余儀なくされた会社から、会社の自主的判断で休業を実施しているところもあり、また従業員が感染して休業する場合もあれば、感染が疑われる場合に休業してもらう場合もあります。
そこで今回は、休業手当の支払いをめぐる会社の対応ポイントを解説します。
これについては、厚労省が新型コロナウィルスに関するQ&A(企業の方向け)を策定していてとても参考になりますが、現場では判断に悩む場合もありますので、それとあわせて解説します。

また、「休業」というと、会社が休む場合と、従業員が休む場合のそれぞれを指すことが多いですが、ここでは「従業員が休むこと(従業員を休ませること)」を指して説明します。
それから、時短勤務も一部休業という位置付けで、休業に含めて説明します。

1 法が定める4類型

従業員の休業については、次の4つの類型に分けて検討することになります。
(1)休業が「会社の故意・過失またはこれと同視すべき事由」による場合
(2)休業が「会社の責めに帰すべき事由」による場合
(3)休業が「不可抗力」による場合
(4)従業員の事情で休業(休暇)する場合

(1)休業が「会社の故意・過失またはこれと同視すべき事由」による場合

この場合、会社は給料の全額を支払う義務があります(民法536条2項)。
「会社の故意・過失またはこれと同視すべき事由」とは、会社側に大きな問題があって休業となる場合をいいます。
例として、違法解雇後の給料や、コロナにかこつけて特定の社員を休ませる場合などがこれに当たります。

(2)休業が「会社の責めに帰すべき事由」による場合

この場合、 会社は休業手当として、平均賃金の100分の60以上を支払う義務があります(労働基準法26条)。
「会社の責めに帰すべき事由」とは、(1)ほど会社に問題があるわけではないけれども、会社の事情で休業となる場合をいいます。
例として、国や自治体から自粛要請を受けたわけではないけれども、コロナ対応のために会社の自主的判断で休業させる場合がこれにあたります。

(3)休業が「不可抗力」(双方の責に帰することができない事由)による場合

この場合、会社に休業手当を支払う義務はありません(民法536条1項)。
「不可抗力」といえるには、厚労省Q&Aによると、
その原因が事業の外部より発生した事故であること
事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること、という要素を両方満たす必要があるとされます。

例として、国や自治体から自粛要請を受けた場合や操業停止に追い込まれた場合などがこれにあたります。
もっとも、厚労省Q&Aでは、それなりにハードルを高く設定しており、
①の例として、「新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく対応が取られる中で、営業を自粛するよう協力依頼や要請などを受けた場合のように、事業の外部において発生した、事業運営を困難にする要因が挙げられます」とあり、
②の例として、「使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしているといえる必要があります。
具体的な努力を尽くしたと言えるか否かは、例えば、
・自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか
・労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか
といった事情から判断されます。」とされています。

さらに厚労省Q&Aは、
「具体的には、例えば、海外の取引先が新型コロナウイルス感染症を受け事業を休止したことに伴う事業の休止である場合には、当該取引先への依存の程度、他の代替手段の可能性、事業休止からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要があると考えられます」と詳細に述べています。

このことからすると、国や自治体から自粛要請を受けた業種に該当する企業の場合は、「不可抗力」だと認められやすいでしょう。
けれども、そうでない企業で、操業停止や業務縮小を迫られた企業の場合は、①②の要件を満たしているのか、(できれば専門家も交えた)個別具体的な検討が必要になってきます。

(4)従業員の事情で休業(休暇)する場合

従業員が感染したり、感染が疑われた場合については、いくつかのケースに分けて検討する必要があります。

ア 従業員が感染した場合

理論的には、会社の職場や職務に関連して感染した場合は、会社側の問題・事情によるものだから(1)又は(2)の類型として給料又は休業手当を払う必要があるとされ、
そうでなく感染した場合は、従業員側の事情であり、(2)の「会社の責めに帰すべき事由」ではないので休業手当は不要となります。
厚労省Q&Aではとくに分類せずに、後者のケースを想定して記載されています。

もっとも、実際にはどこで感染したのか分からないケースが多いでしょうから、安易に従業員側の事情として休業手当を支払わないというのは、慎重になったほうがいいというのが私の見解です。

イ 従業員の感染が疑われる場合

発熱や咳など感染の疑いがある症状が出た場合や、従業員の同居家族が感染したり感染が疑われる場合はどうでしょうか。
理論的には、本人が自主的に休んだ場合は従業員都合で休業手当は不要となり、
会社が会社判断で休ませた場合や、会社が自社基準を設けて一定の症状がでた場合は休むように指示している場合は会社都合として休業手当が必要となります。
厚労省Q&Aでもそういう分け方をしているようです。

もっとも、この場合分けを徹底すると、前者にあてはまると考えた従業員が、無理をしてでも出社して、その結果、感染が広がってしまうという事態も考えられます。
現在、入室・入館時に一律体温測定をしたり、症状がないことを誓約するサインさせる企業が増えてきており、「大事をとって休ませる(休んでもらう)」というのは社会常識になりつつあります。
ですので、この場合にも、アと同様、安易に休業手当を出さないことには慎重になった方がいいというのが私の見解です。

かといって従業員の申し出次第で、会社が対応に振り回されてもいけませんので、会社として一定の自社基準を設けて、それらに該当する場合は休業を指示するといった明確な方針を定めることをお勧めします。

なお、会社が従業員に対して、PCR検査を受けることを「命じることはできない」とされています。

2 休業手当以外の制度

従業員に対する手当は、給料や休業手当に限られるわけではありません。
傷病手当金、雇用調整助成金、有給休暇、病気休暇制度など、従来の制度を利用したり、これを機に新たな会社内制度を設けたりすることで対応していきたいところです。
また、労働基準法が定めているのはあくまで最低基準でして、法律上支払いが義務付けられていない場合でも、会社判断で従業員を手厚く保護することは可能ですので、そのことも知っておかれるとよいでしょう。

以上のように、コロナ禍での休業手当の支払いをめぐる会社の対応ポイントを整理しました。
一言で「休業」といっても、状況や事情は会社によって様々であり、他社事例が必ずしも自社に当てはまるわけではないですし、最新の厚労省Q&Aもすべてのケースを網羅しきれているわけではありません。
右往左往せずに、それでいて臨機応変に対応していく力量が企業に求められているといえるでしょう。
私は日ごろ中小企業の顧問弁護士として、現場の状況を経営者の方と共有しながら、Q&Aの改訂情報はじめ最新情報を経営者の方に提供し、経営者が判断に迷うケースでは共に考え、迅速なアドバイスを差し上げています。
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