増える逆パワハラ。経営者がとるべき選択とは?

部下が上司に対して行うパワハラ、通称「逆パワハラ」が増加しています。
実際、私のもとにも逆パワハラのご相談が増えています。
本来、パワハラに正も逆もないのですが、ここでは部下から上司に対するパワハラを逆パワハラと呼びます。
なぜこのようなケースが増えているのでしょうか。

逆パワハラが増えている背景は?

「上司の萎縮」

これが、逆パワハラが起きる原因の一つになっています。
これだけ「パワハラはいけない」という考え方が普及すると、かえって上司としては「なんでもかんでもパワハラになってしまうんじゃないか…」と不安を覚えてしまいます。
また、経験値や年齢の面で部下の方が上だったりすると、これも上司にとっては心理的なハードルになるといえるでしょう。

と同時に、ネットの普及などにより、(残念ながら)自分に都合のよい情報だけを集めた部下が、上司に強く当たってくるケースも増えています。
こうした背景から、上司の萎縮に乗じて強く当たる部下が増えており、逆パワハラが増えていると考えられます。

上司はパワハラの訴えにおびえる必要はない

パワハラ防止が広く叫ばれるようになって久しいですが、同時に、管理者側にとって、どこからがパワハラなのかが分からなくなっていることが多いです。

その結果、これまでの自分のマネジメントにも懐疑的になってしまい、部下に対する適切な指導ができなくなっているケースが増えています。
もちろん、過度な叱責だったり、人間性の否定は許されませんが、業務上の必要かつ相当な範囲内における指導は、管理者として適切な行為です。
業務上適切な範囲内における指導行為はパワハラには当たらない、と認識することがまず必要です。

現場で起きている逆パワハラ事例

逆パワハラは上司に強い口調で迫るものばかりではありません。
ネチネチと自分の権利を主張し続けて、これにより上司が精神的に参ってしまうこともあります。

CASE1「責任取れるんですか」社員
コロナ禍により、リモートワークに切り替える会社が急増しました。
A社も、週4日のリモートワーク、週1回の出社に制度を切り替えました。
業種柄、完全にリモート化することが難しいため、社員がローテーションで出社している状態です。

ところが、ある社員Bが「この状況で出社させるなんて、非常識でしょ。絶対に出社しません。何かあったら責任取っていただかないとね」と言い始めました。

少ない社員で出社を回しているため、Bだけローテーションから外すわけにもいかず、電車通勤が怖いならば車通勤もできるように、社内規程を変えて対応しようとしました。
しかしBは車通勤を始めたものの、会社指定の駐車場ではなく、会社近くの金額上限のない駐車場に停め、「会社は当然支払うべきでしょ。社員がコロナになってもいいんですか」との要求し、経営陣はその対応に困ってしまいました。

〔波戸岡の見解〕
この場合、会社はBさんの言いなりになる必要はありません。
業種にもよりますが、歩いて通える距離での駐車場指定であれば、業務命令で指示することは可能です。
会社としてコロナ対策について最大限配慮した上での指定であれば、安全配慮義務は尽くしているため、この社員の主張に会社が怯え、頭を悩ませる必要はありません。

ただ、頭ごなしに否定してしまうと事態をややこしくしてしまう可能性もあるので、伝え方には注意が必要です。

CASE2 「退職強要ですよ」社員
とある法人に経験豊富なシニア社員が入社しました。
ところがこの社員は、入社してすぐ経営陣の悩みのタネとなりました。

入社時に用意した部門長室を自室のように使い出すようになり、
スタッフに向けて、ことあるごとに経営陣の悪口を言うようになったのです。
実務経験が豊富ということもあり、他のスタッフへの影響も強く、組織の統制が取れなくなることを、理事長は危惧されていました。

他のスタッフからハラスメントの苦情が増えてきたので、辞めてもらうことを考え始めましたが、どうすればいいか分からず困ってしまいました。

〔波戸岡の見解〕
「社員は辞めさせられない」と誤解している経営者も少なくありません。

たしかに法律上、解雇のハードルは高いですが、「社員に退職を勧める」いわゆる退職勧奨を行うことは、違法ではありません。
本ケースでは、まずこの事務局長に退職勧奨を行うことを勧めました。

面談の機会を設けて、
「◎月◎日をもって退職してほしいと考えております。よく考えてきてほしい」と理事長が伝えたところ、
「私にやめろってことですか。退職を強要しているってことですよね。そんなことが許されると思っているんですか。どうなんですか!」
と強い口調で質問責めをしてきました。

質問責めをしてくる社員に対しては、「こちらの言葉尻をとって責めてくるため、不用意に言い返したり、挑発に乗ってはいけない」と、経営陣に事前にお伝えしていたため、
その場では質問には答えず、あくまでこちらの考えを伝えるだけにとどめました。
そして翌月、その社員は自ら会社を退職することになりました。

逆パワハラ社員は無理に説得しなくてよい

全員とは言いませんが、激しい自己主張を行う社員を、いくら根気よく諭したとしても「自分の中の正義の主張」に夢中になっており、事態が解決に向かわない場合が多いです。

一方、経営者としては「なんとか分かってほしい。こちらは正しいのだから、相手は納得するはず」と信じていても、それが一向に伝わらず平行線をたどっているケースが見受けられます。

逆パワハラ社員への適切な対策としては、
「粛々と業務を進行し、シンプルな指示指導をすること」です。
少々冷たく感じられるかもしれませんが、取りつく島を与えてしまうと事態は長引き、他の社員への悪影響も広がってしまいます。

ですので、事が大きくならないように、冷静に、淡々と。

もし自分達だけでは難しい、と感じられる場合は波戸岡までご相談ください。
経営者の皆さんがどのように振る舞い、事態をどう進めるべきか綿密にアドバイスいたします。

経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
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