Blog 最新記事
- 「弁護士に相談してもなぁ」と経営者が顧問弁護士への相談をためらう理由2023-06-02
- 言われた相手は忘れないもの-ハラスメントとコミュニケーションvol.4ー2023-05-27
- パワハラの判断基準を持とう-ハラスメント防止とコミュニケーションvol.3-2023-05-15
- パワハラは幅のある概念-ハラスメント防止とコミュニケーションvol.2-2023-05-15
- パワハラゼロを目指して-ハラスメント防止とコミュニケーションvol.1-2023-05-14
契約書を交わしていない!業務委託でよくあるトラブルと対処法(フリーランスの方向け)

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
中小企業をもりたてるパートナーとして、企業理念や経営者の想い、事業を理解した上で法的アドバイス、対外交渉、リーガルチェックを行うことをポリシーとしております。これまでの法律相談は1000件以上。ビジネスコーチングスキルを取り入れ、顧問先企業の経営課題・悩みをヒアリングし解消するトリガーミーティングも毎月行っています。
フリーランスでお仕事をされている方から、業務委託のご相談を頂くことが多くなりました。
よく頂く相談として、「契約書を交わさずに業務委託を受けたが、その後トラブルになっている」というものがあります。
契約書がない場合にどのようなトラブルが発生してしまうのか、どのように対処すればいいのか、契約書を作る場合どのような内容を盛り込むべきなのか……これらは個人事業主(フリーランス)で働く方が増えている時代に、押さえておきたいテーマです。
契約書を交わしていないことで起きる業務委託契約のトラブル
1.業務内容や範囲がはっきりしていないパターン
サービスのつもりでやっていたことがいつの間にか当然となってしまい、どこかのタイミングで追加料金を請求すると、「それは聞いていない」と拒否されてしまうパターンです。
好意ではじめたことが当たり前のこととして認識されるようになり、いわゆる「なあなあ」で業務が続いてしまうことによって無理が生じると、やがて疲弊してしまいます。
対策としては、受託する業務について、「業務範囲」「業務頻度」「業務時間」を契約書ではっきりとさせておくことが大切です。
例えば、レポートであれば何通まで、訪問であれば何回まで、業務が多岐に渡る場合は1か月あたりの想定稼働時間などを数値とともに決めておきます。
そうすると、先方にとっても、多く頼んでいるのかどうかがはっきりするので、トラブルが起こりづらくなります。
2.突然契約を打ち切られるパターン
プロジェクトが1年がかりと聞かされて他の仕事も断っていたのに、突然契約解除を言われてしまうなどのトラブルもよくあります。
対策としては、契約書で業務委託期間を定めておくことが大切です。そして、契約書において中途解約をできなくするか、あるいは中途解約する場合は残りの期間相当の報酬を払ってもらうなどの取り決めを交わすことで、中途解約されるリスクを回避します。
受託者の立場は弱い?
フリーランスの立場として業務委託契約をする際には、先方に対してなかなか強気に出ることはできないという方も多くいらっしゃるでしょう。それでも、最初のうちにリスクにそなえた契約書を交わしておくことは大切です。
また、契約書を交わしたいと提案すること自体に抵抗感がある方もいらっしゃるかもしれませんが、むしろリーガル面でしっかりしている事業者だとポジティブな印象を相手に与えるメリットもあります。契約書を示すだけで反感を持たれることはまずないでしょう。相手が反感を示すような会社でしたら、逆に付き合わない方がいいかもしれません。
それでも、どうしても言いづらいようでしたら、「顧問の先生に契約書は必ずかわしなさいと言われているので……」という言い方なら伝えやすいかと思います。実際に私の顧問先の事業主の方にはそのように伝えている方もいらっしゃいます。
過去トラブル事例の紹介
業務委託契約で契約書を結ばなかったことによるトラブル事例をご紹介します。
CASE1.イベント関係のコンサルタント
通年イベントの仕事を業務委託で依頼されたコンサルタントがいました。
業務開始にあたり契約書を途中までは作っていたものの、 仕事の範囲など定めきる前にプロジェクトが始まってしまったため、捺印しないままプロジェクトが進行してしまいました。しかし、ある時突然契約が打ち切られてしまいました。
1年がかりの大きなプロジェクトだったため、そのコンサルタントは他の仕事も断って臨んでいたため困り果ててしまいました。その後、 交渉を続けたものの決裂してしまい、裁判を起こしましたが、芳しい結果にはつながりませんでした。
CASE2. 動画編集の業務委託
フリーランスの動画編集者がYouTubeの動画編集の仕事を受けた際に、先方に予算がないとのことだったので、とりあえずは動画を制作し、後に広告収入が入るようになったら報酬をもらえるという口約束を交わしました。
そして、実際に動画が上手く回りはじめたのですが、広告収入による報酬の話はいつまでたっても一向にされませんでした。そこで先方に口約束を交わした件を伝えたところ、払うつもりはないと一蹴されてしまいました。
このご相談をいただいて、メールや面談時の要求の伝え方を具体的にアドバイスいたしました。その後、アドバイスの甲斐もあり、成果報酬の割合を取り決める話し合いが実現し、書面を交わし、報酬を受け取ることができるようになりました。
業務委託契約書を結ぶ上で気を付けるポイント
1.業務の範囲を明確にする
「どの範囲」「どの頻度」「どれくらいの時間」をできるだけ具体的な数値で定めます。
2.契約期間と中途解約条項の有無を明確にする
急に解約されないように、契約期間や中途解約の際の保障などについても契約で取り決めておくことが大事です。
3,知的財産権、ノウハウの権利者を明確にする
デザインやコンサルティングレポートなど、業務結果として目に見える成果物ができる場合は、著作権などの知的財産権の所在を明らかにしておかないと、後からトラブルになる可能性があります。
まとめ
近年はジョブ型雇用の広がりやフリーランスの増加によって、業務委託で働く方が増えています。業務委託は社員と違い、自分のことは自分で守らないといけないというリスクがあります。
業務委託で働いている方の中には、先方が言ってこない限り契約書を交わしていないという方も多いですが、安心して仕事を続けるためにも、リスクヘッジはしておきましょう。
私は、契約書のリーガルチェックのサービスも積極的に展開しています。また、業務委託に関してトラブルに巻き込まれた際にも、先方とのやり取りをアドバイスし解決までサポートするサービスも行っております。定額サービスもご用意しており、この場合は着手金や成果報酬等は頂かないので安心してご相談いただけます。業務委託のこと、お気軽にご相談ください。
契約書リーガルチェックはこちら
定額サービスについてはこちら
波戸岡へのご相談はこちら
経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
東京都港区赤坂3-9-18赤坂見附KITAYAMAビル3階
TEL 03-5570-5671 FAX 03-5570-5674