絶望からの再生、そしてイノベーションへ。from 『名画で学ぶ経済の世界史』 (良書から学ぶ、経営のヒント)

読書はルーティン、本を読まない日はないと言ってもいいほど本好きな波戸岡が哲学、経営学、統計学、心理学、コーチング、歴史……と、ジャンルにとらわれず読む中で常に感じるのは、本はそれまで自分にはなかった視点をいつも提供してくれるということです。
新たな視点を持つことで思考がブラッシュアップされ、仕事においても広く柔軟な姿勢で臨めるようになるなど、変化をもたらしてくれるのは本の魅力です。
一見、仕事とは関係ないと思われるジャンルの書籍からも「なるほど、そんな見方があったのか!」「これこれ!この考え方」という真新しい視点を得られることがあるのです。

経営者の方とお話ししていると「話題の本を読んでみたい」「インプットの時間を取りたい」と思いつつも、忙しくて時間が取れないのが現状という方が多くいらっしゃいます。
そこで、経営者の方に向けて、経営に役立つエッセンスと視点をお伝えできたらと思い、このブログで波戸岡がおすすめする書籍とそのエッセンスをご紹介することにしました。

第1回にご紹介するのは『名画で学ぶ経済の世界史-国境を越えた勇気と再生の物語-』(田中靖浩著)です。
絵画、経済、世界史とアカデミックな言葉が並ぶと敬遠しそうになるかもしれませんが、大丈夫!本書籍でお伝えしたい、私なりのエッセンスは次の3つです。

① ペストと経済不況から再生したフィレンツェの軌跡「ルネサンス」
② 「オイルオンキャンパス」というイノベーション
③ 技術革新の「圧力」を乗り越えたイギリス物語

ペストと経済不況から再生したフィレンツェの軌跡「ルネサンス」

ルネサンスの時代背景、革新へのモチベーション、未知の世界へ進むときの先が見えない不安といった要素は、現代の社会と重なる点が多くあります。
歴史の出来事を身近に感じる視点もあわせてご紹介しますので、ぜひ自分事にして思考を巡らせてみてください。

14世紀~16世紀に起こったルネサンスの時代は大航海時代。東方貿易商人によるグローバルな移動でペスト(黒死病)が蔓延しました。さらにペスト直前には銀行の倒産が起こるなど、経済不況に追い込まれていました。ヨーロッパでは人口の3分の1~3分の2にあたる、約2000万~3000万人が亡くなったと推定されています。

そんな未曽有の危機に直面する中で起こったのがルネサンスです。誰もが死の前では無力であることから、それまでのキリスト教的死生観は劇的に変化します。大きな意識革命が起きたところに、東方貿易と金融業で莫大な財をなしたメディチ家の台頭、権威回復をもくろむローマ教皇カトリック、革新的な創作を行う芸術家たちの存在が結びつき、人間賛歌のルネサンスが花開いていきます。

当時イタリアにはダヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ、ボッティチェリ、ダンテなど型破りな人々が現れ、芸術的感性をフル活用して創作を行いました。芸術家たちの競争心も相まって、芸術レベルは大きく飛躍。700年たった今でも私たちの心をつかむほどの圧倒的な創造力を見出すことができます。

絶望しかない状況から、その後何百年も輝きを失わない世界的革新が起こる。
ルネサンスのパワーと躍進劇は、絶望の中であっても希望を見出すことを教えてくれます。

【良書からこの視点】
▶劇的危機に置かれても、不幸にうつむかず、再び立ち上がるエネルギーを生み出そう。

「オイルオンキャンパス」というイノベーション

油絵といえば油分を含む絵の具でキャンバスに描くものであることは周知の事実ですが、実は絵画に油を使う、布に描くという手法はルネサンス以前は存在しませんでした。

イタリアで始まったルネサンスの絵画を見た北ヨーロッパの人は、自分たちも自国で同じような絵を描いてみたい思い挑戦するものの、既存の絵の具では思うような表現ができませんでした。それでも諦められず、どうにか表現する方法はないかと思案しているとき、女性が亜麻仁油を使っているのを見て「あの亜麻仁油つかえるんじゃないか」と使ってみたところ、イタリアのような鮮やかな色彩を出すことに成功。
油を使って絵を描くという、それまでどこにもなかった発想は、諦めずの悪さと視野の広さがもたらした産物です。

キャンバスも同様に、板に描いていた絵はゆがみが出るし、持ち運ぶのも難しい、何かいい方法はないかと探していたところ、当時は大航海時代、「あの帆に描いたらゆがみなく、持ち運びができるんじゃないか」という、まさかの発想が功を奏して布に絵を描くキャンバスが発明されたのです。
そんなのおかしいと笑われても、諦めずに既存の概念には全くない方法を試し続けることこそが、時代を変えるイノベーションにつながるのです。

【良書からこの視点】
▶「諦めの悪さ」と「視野の広さ」がイノベーションを生む!

技術革新の「圧力」を乗り越えたイギリス物語

新しい技術革新が次々と生み出されたとき、人々がそのすべてをポジティブに受け取っていたわけではありません。これはある意味当然のことで、既存のものから離れ、新たな世界へ行くときには大きな不安を伴うものです。19世紀にカメラが登場したときには、それまで肖像画を仕事にしていた多くの画家は、仕事がなくなる不安におびえました。

しかし、19世紀イギリスで風景画家として活躍したウィリアム・ターナーは「確かにカメラは事実を正確に写すけれど、絵は主観的に見て、抽象化して描くものだ。それができるのは人間だ」と主張したのです。

新しい技術は「圧力」でもあります。そこから逃げてしまうと時代に乗り遅れ、ほどほどにうまく付き合っていこうという態度では時代に飲み込まれる。立ち向かいつつ圧力を乗り越えて「これは絵にしかできないものだ」と言い放ったターナーのように圧力を乗り越えた者だけが、新しい時代を作るのです。

AIが台頭し、今ある職業の半分がなくなると言われている現代。まさに新技術の圧力をどう乗り越えるか、経営者にとって深く刺さる視点となります。

【良書からこの視点】
▶新技術を徹底的に知り、新技術を活用して、新しい商品やサービスを生み出そう!

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。

私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。
また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。

経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。

ご相談中の様子

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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