成長を見据えた「発展編」PMI:攻めの統合で未来をつくる

PMIとは、「Post Merger Integration」、つまりM&A後の統合プロセスのこと。譲り受けた企業を自社の中にどう取り込むか、どう共存しながら成果を出していくか、という一連の活動を指します。

ひとつ前のブログでは、PMIの基本的な内容をお伝えしました。

M&Aはゴールじゃない。「PMI」という次のステージ

さて、M&Aの成立から100日間を走り抜け、事業の安定と信頼関係の基盤を築いたら、次に待っているのが「発展編」と呼ばれるフェーズです。

ここでは、PMIを単なる引き継ぎに留めず、自社の成長エンジンへと転換していく取り組みが求められます。言い換えるなら、“変化に対応する”から、“変化を活かして成長する”段階に入るということです。

経営を統合し、未来を描く

「経営統合」の発展編では、表面的な方向性の共有から一歩進み、新しい経営体制と仕組みの再構築を行います。

  • 経営理念やビジョンの再定義
  • 新たな事業計画の策定
  • 経営チームの組成と役割分担
  • 意思決定プロセスの見直し(会議体や権限)

これらはすべて、譲受側と譲渡側がひとつのチームとして動くための準備です。特に、組織の幹部層が同じ未来を見ていなければ、現場の足並みも揃いません。

この段階での法務的な論点としては、取締役構成や定款変更、株主間契約なども出てくることが多いため、引き続き顧問弁護士の伴走が不可欠です。

シナジーを引き出す「業務統合」の攻め方

「業務統合」の発展編では、シナジー効果を本格的に形にしていきます。ここでは“守り”だけでなく“攻め”が重要です。

【売上シナジー】
  • 製品・サービスのクロスセル
  • 販売チャネルの共有・拡張
  • ブランドの相互活用
【コストシナジー】
  • サプライヤーの統合による共同仕入れ
  • 拠点やシステムの統廃合
  • 管理部門の効率化
【管理機能の整備】
  • 会計処理の統一とモニタリング体制の構築
  • 契約書や社内規程の再設計
  • ITシステム・セキュリティポリシーの見直し

これらは一つひとつが経営インフラに直結するテーマであり、顧問弁護士や税理士などの専門家と協力しながら、実務と法務をバランスよく進めることが肝心です。

成長の土台を整える「人・組織・文化」へのアプローチ

発展編では、数字や仕組みだけでなく、“人”へのアプローチもより深く行う必要があります。

  • 人材配置の最適化(適材適所の再考)
  • 評価制度・賃金制度の調整と統一
  • 従業員エンゲージメントの測定と施策

そして、忘れてはならないのが「企業文化の融合」。

買収した側のやり方を一方的に押しつけるのではなく、互いの良さを活かす“共創の文化”を築くことが、結果的に社員の定着や士気向上につながります。

グループ経営・中長期視点での体制設計

複数の会社を束ねていくPMIでは、単一企業とは異なる視点も必要になります。特に中規模M&A以降では、以下のような観点も視野に入れておくべきです。

  • 持株会社体制か、事業会社単独か
  • グループ全体の経営管理ルール
  • グループ間取引の整理
  • グループコンプライアンス体制の整備

このような中長期の枠組み設計には、一度立ち止まって法的・財務的リスクを俯瞰することが重要です。顧問弁護士や会計士との戦略的な議論が、次のM&Aや事業再編の成功にもつながります。

発展編こそ「仕組み化」と「パートナー戦略」

PMIを通じて会社を成長させるには、“仕組み”と“人の巻き込み”が両輪になります。

  • 成長を支えるルールや制度の整備
  • 社員の納得感と共感を得る説明力
  • 外部専門家との連携による強力な体制

発展編では「ひとりで抱え込まない」ことが成功の秘訣。顧問弁護士をはじめとしたパートナーと一緒に戦略を練り上げていくことが、次なる飛躍の礎になります。

 

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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