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合意にたどり着く「着地」させるスキル ―決めきれない話し合いに、前進の一歩を
話し合いが白熱するのはいいことです。
しかし、いくら議論を重ねても「じゃあどうする?」の場面で止まってしまう。
そんな経験をしたことはないでしょうか。
関係性は悪くない。議論も活発。でも、着地できない――。
それは、合意形成の“最後の一歩”に必要なスキルが、意外と見過ごされているからかもしれません。
ここでは、話し合いを実りあるものにするための「合意に向かう整理術」=“着地スキル”を解説します。
目次
小さな合意が、大きな合意を呼び込む
話し合いのなかで、いきなり「これで決まりですね」とゴールに飛びつくのではなく、まずは小さな合意を積み重ねることが有効です。
この背景には、心理学で知られる以下の原則があります。
- 一貫性の原則:人は自分の言動に一貫性を保ちたい。小さな承認や発言をしたあとは、それを否定しにくくなる。
- ツァイガルニク効果:人は“未完了”の状態に違和感を覚え、結末を求めようとする。ドラマの「続きは次回」が気になるのと同じです。
- 目標勾配仮説:人はゴールに近づくほど、モチベーションが上がる。「あと少し」と感じたとき、人は踏ん張れる。
たとえば、「この方向性自体は共有できてますよね」といった確認の積み重ねが、最終的な合意を引き寄せるのです。
小さなゴールを一歩ずつ越えていくからこそ、「せっかくここまで来たのだから、もう一歩頑張ろう」と思える心理状態が生まれます。
合意の幅を持たせるという工夫
交渉や調整の場では、ゴールに「幅」を持たせることが、合意の柔軟性を高めます。
この発想を支えるのが、交渉理論で知られる「ZOPA(ゾーパ)」という概念です。
【ZOPA=Zone of Possible Agreement】
「お互いが合意できる価格帯や条件の範囲」のこと。
たとえば、売り手の希望価格が100~50万円、買い手の許容範囲が60~30万円であれば、ZOPAは「50~60万円」になります。
このZOPAの範囲が見えてくると、「今すぐ正解を出す」プレッシャーから解放され、“交渉の余白”の中で柔らかく対話することが可能になります。
自由を残す、3つの選択肢
人は「これしかありません」と言われると、本能的に反発したくなります。これは心理的リアクタンスと呼ばれる反応です。
そこで有効なのが、複数の選択肢を提示すること。
特に「三択」が有効だと言われます。
- プレミアム/スタンダード/ライト
- 松/竹/梅
- S/M/L
こうした三つの選択肢は、「自分で選んだ」という納得感を生みやすく、話し合いの流れを前に進めてくれます。
一択では強制感が強く、二択では選ばされている印象が残る。三択は選びやすく、納得しやすいのです。
第三の道を探る「クリエイティブ・オプション」
A案でもB案でも折り合わない――そんなときに必要なのは、「第3の選択肢を一緒につくる」視点です。
これは「クリエイティブ・オプション」と呼ばれ、創造的な発想によって新たな解決策を生み出します。
発想法のひとつに、「SCAMPER」というフレームがあります:
- Substitute(代用)
- Combine(結合)
- Adapt(応用)
- Modify(修正)
- Put to another use(転用)
- Eliminate(削除)
- Reverse(逆転)
たとえば、「対面かリモートか」で対立しているとき、「一部だけ対面」「録画+チャットで意見交換」といった第三案を探ってみる。
この柔軟な視点が、停滞した話し合いを再び動かしてくれることがあります。
「これしかない」を手放すためのBATNA思考
どんなに丁寧に進めても、合意に至らないことはあります。
そんなときに必要なのが、「それでも自分には別の選択肢がある」と考えられるBATNA(バトナ)の視点です。
【BATNA=Best Alternative To a Negotiated Agreement】
「交渉が成立しなかったときの、最良の代替案」を意味します。
たとえば、「この案件がまとまらなくても、別のプロジェクトが動いている」と思えれば、目の前の交渉に執着しすぎず、落ち着いて臨むことができます。
逆に、「これしかない」と思ってしまうと、視野が狭くなり、不安や焦りで判断を誤りがちです。
一方で、「いくらでもあるさ」という根拠のない楽観は、判断を甘くしてしまう。
大切なのは、現実的かつ信頼できるBATNAを自分の中に持っておくこと。
それが、冷静な合意形成の土台になります。
まとめ
「合意に着地する」というのは、単に話を“まとめる”ことではありません。
そこには、相手の心理・認知の特性を踏まえた、いくつもの設計と工夫があります。
- 小さな合意を重ね、着地への流れをつくる
- 合意の幅や選択肢を持たせ、納得感を支える
- 創造的な第3案で膠着を打開する
- 自分の中にBATNAを用意し、冷静さと余裕を保つ
このような「着地のスキル」は、立場を問わず、誰もが身につけておきたい対話と交渉のリテラシーといえるかもしれません。
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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