今の時代だからこそ必要なコミュニケーション力を身に付ける!

「言いたいことが伝わらない」「相手の考えがわからない」「なんだか人間関係がぎくしゃくしている」などとストレスを感じることはありませんか?

私たちは、日々、多くの方とかかわりを持ちながら暮らしています。なかには「気が合わない」「コミュニケーションがうまく取れない」相手もいるでしょう。プライベートなら、そのような人との付き合いをやめてしまうこともできますが、仕事となるとそうはいきません。コミュニケーションが上手くいかないと精神的にストレスを感じるだけでなく、ミスや業務の質の低下、離職者の増加、コンプライアンス違反、顧客の信頼失墜などにつながる恐れがあります。

私は弁護士として多くの方から相談を受けたり、弁護や交渉を行っていますが、日々コミュニケーションの重要性を実感しています。そのために、ビジネスコーチングのプロ資格を身につけたり、交渉学や心理学を学び、実務に取り入れています。
今回は、コミュニケーション力をアップさせるスキルやヒントをお伝えしますので、ぜひコミュニケーション上手になって頂けたらと思います。

より良いコミュニケーションが強い組織を作る

皆さんはマサチューセッツ工科大学のダニエル・キム元教授が提唱した「組織の成功循環モデル」をご存じですか?組織運営には「グッドサイクル(好循環)」と「バッドサイクル(悪循環)」があり、「関係の質」「思考の質」「行動の質」「結果の質」それぞれの質を上げることが組織を成功に導くという考え方です。

問題は、最初にどの質を上げればよいか、ということです。

ついつい私たちは「結果の質」を上げることから入ろうとしてしまいます。いい結果を残したい、いい成果を出したいと思ってしまうのです。でも、これはバッドサイクルにつながる恐れがあります。
いい結果を得るために、部下に無理を強いる。思った結果が出ずイライラする。すると人間関係が悪化して思考がネガティブになる。「あの人と電話したくない」「あの人のために仕事したくない」と行動の質が下がる。そうすると結果的に成果が上がらない。結果を求めているのに、結果につながらないのです。

まずは関係の質を上げること、これが強い組織づくりには重要です。そして、この関係の質を上げるために必要なのが「コミュニケーション力」です。

今、多くの企業がコミュニケーション力を重視しています。近時の調査では、企業が採用選考時に重視する要素の第1位は、「コミュニケーション能力」でした。それだけ、企業にとってもコミュニケーション力は欠かせないものになってきているのです。

コミュニケーションの4つのスキル:「聴く力」「質問力」「フィードバック力」「提案力」を上げる方法

ここからは、どのようにコミュニケーション力を上げるかについてお話しします。

実は、コミュニケーションには1.聴く、2.質問する、3.フィードバックする、4.提案する、の4つのステップがあります。普段の会話を思い浮かべてみてください。私たちは4.提案から話していることが多くはないですか。そして、必ずしも相手が「YES」と言ってくれないのが大きな悩みだったりしませんか。

コミュニケーションはちゃんとステップを踏むことが大事です。そして、このステップを踏む行為が「コミュニケーションをとる」ということでもあるのです。

Step1.先ずは話を「聴く」

最初のステップは「聴く」です。なぜ、あえて「聴く」という文字を使っているのか?それは、「聞く」は自然に耳に入ってくるだけの受動的な行為なのに対して、「聴く」は積極的に耳を傾けることを表しているからです。目と耳と心をもってしっかり相手の言うことを聴くことが重要です。

人には「自分の話を聴いてもらいたい」という承認欲求があります。誰もが「自分の話を聴いて欲しい」と思っているのです。話を聴くことは良い関係性の構築に役立ちます。話を聴くことで、以下のように信頼関係が築かれていきます。

「あの人は自分の話を聴いてくれる」  <承認欲求を満たす>

「あの人は自分のことをわかってくれる」<よき理解者になる>

「そんなあの人に相談したい」     <信頼感が芽生える>

「そんなあの人の力を借りたい」    <専門スキルの発揮

以下では、承認欲求を満たし、信頼関係を築く聴き方のポイントをお伝えします。

●話を遮らない

話をしているとき、途中で遮ってしまうと相手はものすごくストレスを感じ、
「あ、この人は私の話を聴いてくれていない」

そう思ってしまいます。

私たちは話すスピードより聞き取るスピードの方が速いです。ですから、最後まで話を聴かなくても何が言いたいのか見当がついてしまい、余裕ができた脳のスペースを使って、話を遮って質問をしたり、提案をしたりしてしまうのです。

「ちゃんと聴いているよ」と言うことがありますが、実は、相手が話をしている途中で「なんて返そうか」とか「次にどんな質問をしようか」とか「この人、また文句を言っているな」などと頭の中で考えていることが多いです。これをしてしまうと、相手は「ちゃんと聴いてくれていない」と感じてしまいます。

ですから、自分が話し出したい欲求を抑えて最後までちゃんと話を聴きましょう。もし、途中で話す必要がある場合は「いったん私が話していいですか」と許可を得てから話すようにするとよいです。

●「ちゃんと聴いている」ことを態度で示す

話を聴くときの態度も重要です。「うんうん」「はいはい」と口先だけでなく、身振りや視線、表情など全体で、興味と好奇心を持って「あなたの話を聴いているよ」と伝えることが重要です。
例えば、体ごと相手に向けて話を聴いていますか?パソコンに向かいながら、「ハイ、ハイ」と首だけ向けて頷いたり、スマホを見ながら話したりしていませんか。うなずきや相づちなど、相手のペースに合わせるようなペーシングをしていますか?無理やりスマホをカバンにしまわなくてもよいですが、ちょっと裏向きに伏せるだけでも、今からちゃんとあなたの話を聞きます、ということは示せます。また、腕組みは威圧感を、背もたれに寄りかかる態度は無関心な印象を与えるので注意しましょう。

●伝えたいことが伝わる表情や声のトーンを使い分ける

態度と同じくらい重要なのが、表情や声のトーンです。同じ言葉でも、「どう言ったか」によって、相手の受け取り方は変わってきます。話を聴きながら「そうだね」と相づちを打った時、あなたはどんな表情で言っていますか?その時の声のトーンはどうですか?無表情で低いトーンで言ったなら、相手は「関心を持ってもらえなかった」と思うかもしれません。でも、柔らかい口調で言われれば「ちゃんと受け止めてくれた」と感じるでしょう。

なぜそう感じるのでしょうか。それは、人と人とのコミュニケーションにおける心理学上の法則の1つ、「メラビアンの法則」で説明ができます。この法則によると、人が話をしているときに影響を受けるのは言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%と言われています。なんと、目や耳からの情報が93%を占めているのです。ですから、身振り、手振り、表情、声のトーンや大きさなど、相手にどう見えているか、どう聞こえているかが重要なポイントです。

真面目になればなるほど、人は表情が怖くなったりするので、思わぬところで損をしないように気を付けたいものです。

Step2.いい「質問」をする

「人は感情の生き物である、〇か×か?」

突然ですが、皆さん、どうでしょうか。

今、こう聞かれて、多くの方が頭の中で「どっちだろう?」と考えたのではないでしょうか。人は質問されると答えたくなる性質を持っています。脳が答えを探し始めるのです。その性質を活用することで、コミュニケーション力をぐっとアップできます。

そのためには、「いい質問」をすることがポイントです。いい質問は良質な思考を生み出します。ありきたりな質問では思考は膨らまないので、質問力を高めることでコミュニケーションの質は高まります。
それではどんな質問が「いい質問」でしょうか。

●相手が話したいことを質問する

まずは、相手にフォーカスした質問です。相手の考えや思いなど、相手に聞かないと分からないことや、相手が話したいと思っていることを話してもらえるような質問。そういった質問は相手の思考を促し、気付きをもたらし、選択肢を増やしてくれます。そうなれば会話が発展し、円滑なコミュニケーションが取れるとともに、信頼してもらえるようになるでしょう。

●考えを広げるオープンクエスチョンと、決意を促すクローズドクエスチョン

オープンクエスチョンは自由に思いを巡らせることができる質問方法で、相手の考えを解き放ち、選択肢が広がります。
「5W1H」
というと分かりやすいかもしれません。いつ?どこで?だれと?と言う質問をすると聞かれた方は自由に思いを巡らすことができます。仕事の場面なら、「このビジネスモデルで、何を実現したいですか?」「一番理想はどんな状態ですか?」「それが実現できたらどんないいことがありますか?」という質問をすると、考えがどんどん広がっていきます。

一方、クローズドクエスチョンは「YES」「NO」で答えられる質問です。「やりたいですか?やりたくないですか?」「欲しいですか?欲しくないですか?」といった質問で、ちょっと威圧感を感じます。このような質問は思考が狭くなりますし、「決めさせられた感」が強くなるのであまり使わないほうがよいとされています。
一方で、クローズドクエスチョンは決断や決意を確かめたり促す効果があるので、そういう場面で使うと良いでしょう。例えば、新たなプロジェクトを進めるときなどに「本当に、それをやりたいですか?」とか「このまま進めていいですか?」といった質問で相手の決断を確かめたり促すことができます。

●物事を抽象的にするチャンクアップと、具体的にするチャンクダウン

「チャンク」とは大きな塊のことですが、「チャンクアップ」は物事をより広い視野で見るように課題をその大本から捉え抽象化していくこと、「チャンクダウン」は物事を小分けにしていくように課題を細かく具体的にしていくことです。

例えば、日々の細かな作業や日常の仕事の中で、
「あなたにとってこの仕事はどんな意味がありますか?」
「仕事を通じて大切にしたいことは何ですか?」
と言った質問をすることで、思考を上へ上へと広げていき、自由な発想になってもらう。そうすることで、その人のビジョンや価値観が見えてきます。

一方、チャンクダウンは場面や状況を絞っていくことで、問題のありかを探ることができたり、実際のイメージがクリアに見えてきます。
例えば、新しいアイデアが浮かんだとき、
「どういうときにこのアイデアは活用できますか?」
「それは誰が使いますか?」
と、そのアイデアが実現した時の具体的なイメージが浮かぶ質問をしていくのです。

それぞれの特徴を意識して質問を使い分けることで、会話やコミュニケーションの質を高めることができます。

●他にもある、質問スキル

視点を変えて質問をしてみるのも、質問力を高める一つの手法です。
視点を未来に動かし「これが上手くいったとすると、あなたの何が良かったのでしょうか」とか、視点を他人に置き換えて「あなたの尊敬する先輩なら、困難な場面でどんなアクションを取ると思いますか」と言った具合です。

また、言葉の背景を深掘りするのもコミュニケーションを深める質問の一つです。「もう少し詳しく聞かせていただけますか?」とか「と、言うと?」などと言葉をつなげましょう。「そうですね」だけだと会話が終わってしまいがちますが、「と、言いますと?」といった言葉を使うことで、「私の言葉を拾ってくれた」「深掘ってくれた」とコミュニケーションがぐんと深まります。

また、ミーティングの最後には「来月までに何をしましょうか」とか「今日からできることは何でしょうか」というような、行動を促すための問いかけをすることも有効です。

お伝えしたように、質問にはさまざまなバリエーションがあります。質問によって、その後の方向性や行動を促すことができます。シチュエーションに合わせて、質問を使い分け、いい質問を投げかけましょう。

Step3.フィードバック(FB)は、自分が感じたありのままの事実を伝える

話を聴いた後は、自分が感じたこと、思ったことを相手に伝えましょう。もちろん、伝えるべき内容かどうかは判断する必要があります。でも、良いことでも、悪いことでも、FBすることはコミュニケーションを深めるうえでは重要で意味のあることです。

●自分が内側で感じたことを伝える「主観的FB」

主観的FBとは自分が内側で感じたことを伝えることです。このときに気を付けたいことは、「I(私)」を主語にすることです。相手を主語にしたり評価を加えたりすると、コミュニケーションがギクシャクしがちです。

【I(私)が主語】
私:私はあなたの意見はおかしいと思いました。
相手:そうですか(あなたはそう感じたんですね)。どこがおかしいのでしょうか。

【YOU(あなた)が主語】
私:あなたの意見はおかしいです。
相手:そんなことないです!(私はおかしなことは言っていない!)

同じことを伝えても、Iを主語にしたときとYOUを主語にしたときでは、相手の受け止め方や返答が変わってきます。相手を褒めるときも「君はできるね」ではなく、「上手くいって私も嬉しい」というように「I(私)」を主語にしてみてください。

●当たり前の基準を下げてみる

それから、「当たり前の基準を下げる」ことも必要です。特に、部下や後輩と接するときは注意しましょう。
皆さまは部下や後輩よりも仕事ができるはずです。自分の基準で見てしまうと、部下や後輩の仕事はできて当然のことかもしれませんし、もしかしたら期待していたレベルではないかもしれません。そのような仕事に対して、あなたはどうFBしますか?せっかく頑張ったのにノーリアクションでは相手はガッカリしてしまうのではないでしょうか。
ですから、心の中の当たり前基準を下げて、ちょっとしたことでも「ありがとう」とか「助かるよ」「以前より早くなったね」などいう言葉を伝えてあげて欲しいと思います。笑顔で「ありがとう」だけでも、言われた方は嬉しいものです。

●見えたことや聞こえたことを伝える「客観的FB」

客観的FBでは、実際に見えたこと、聞こえたことをFBしましょう。
例えば、相手が何か心配そうにしているように感じたとき、「何を心配してらっしゃるんですか?」ではなく、「先ほどから何度も“リスク”とおっしゃっていますね」とか、考え込んでいるように見える相手に、「何か考え込んでいらっしゃいますね」ではなく、「なんだか、遠くを見てお話しされていましたね」などという言い方をしてみましょう。そう伝えることで、相手は自分の中にある思いに気づいたり、ちゃんと見てくれているという信頼感が生まれ、より良い対話につながります。

Step4.提案は、判断の基準や選択肢を提示する

さて、最後は「提案」です。提案するときに気を付けたいのは、決定権は相手にあるということです。

精一杯の提案をしても、「自社で検討します」とか「ちょっと考えさせてください」と言われてしまうことはありませんか?どんなにいい提案であっても、それを受け入れるかどうか決めるのは相手です。私たちができるのは、相手が判断できるだけの判断基準や選択肢を提示することだけです。
もちろん、その道のプロであるなら、それまでの経験や信念から「きっとその提案が正しい」ということもあるでしょう。その時は自信を持って提案しましょう。

●頭ではわかっていても、心が「ノー」ということもある

自信を持って提案するときに念頭に置いていただきたいことがあります。それは、人は頭では「やったほうがいい」「正しい」と思っていても、心がブレーキをかけて「ノー」と言うことがある、ということです。それが「心理的リアクタンス(心理的抵抗)」と「不確実現象」です。

人は選択の自由を脅かされると、本能的に反発してしまい、それを「心理的リアクタンス(心理的抵抗)」といいます。選択肢が一つしかないとき、心が「ノー」と言うわけです。
「やりなさい」と言われるとやりたくなくなる。「止めなさい」と言われるとやりたくなる。「宿題をやりなさい!」と言われると、子どもは「嫌だ!」となりますし、鶴の恩返しにもあるように、「見ないでください」と言われると見たくなる。だから、「これがいいですよ」と言われると「本当にいいのだろうか?」とブレーキがかかってしまいます。
もし、そういうことが起きていると思ったら、選択肢をいくつか用意しましょう。その中から自分で選択することで「選択の自由」が与えられたと感じます。

「不確実性現象」とは、人は不確実性を前にするとリスクを嫌い、本能的に一時停止ボタンを押してしまう現象です。絶対に悪い方向に向かうことがわかっている提案を受け入れる人はいないと思いますが、いい方向に向かうのか悪い方向に向かうのかわからない場合も、人は躊躇してしまうのです。

この不確実性に上手く対応しているなと思うのがネットショッピングです。例えば、ネットで靴を買おうと思っても「サイズがあわなかったらどうしよう」「返品できるのか」「返金してもらえるのか」と不安で購入できません。でも、購入時に返品や返金についてしっかり確認できるようにしていたり、簡単に返品できる仕組みを作ったりすることで、不確実性を下げ、購買促進につなげている企業もあります。

以上、コミュニケーション力をアップさせる多くのスキルやヒントを述べてきました。
今の時代、世の中はさまざまなコミュニケーションツールで溢れています。それでも、「コミュニケーションを取るのが苦手」という人が増えていると言われています。
そして、コミュニケーションは学ぶ時代になりました。ぜひ、コミュニケーション力を磨いて、仕事もプライベートも楽しくレベルアップしていきたいものです。

私、波戸岡は、コーチングのスキルを活かして、コミュニケーションスキルの研修を行っています。いつでもご相談や、お手伝をいたしますので、お気軽にご連絡いただければと思います。

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。

私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。

経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。

ご相談中の様子

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

経歴・実績 詳細はこちら
波戸岡への法律相談のご依頼はこちら

経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
東京都港区赤坂3-9-18赤坂見附KITAYAMAビル3階
TEL 03-5570-5671 FAX 03-5570-5674