完璧すぎる契約書も困りもの?-信頼を築くための契約書-

私は主に中小企業の顧問弁護士として日々取り組んでいます。
最近、契約書に関するとあるご相談を立て続けにいただきました。

それは
「契約書の作成とリーガルチェックを、弁護士の力を借りながら完璧に行っている。でもその内容が完璧すぎてちょっと…」
という少し変わったお悩みでした。

契約書が完璧すぎるのも困りもの?

完璧すぎるが故の悩み。

興味深く思い、もう少し掘り下げて話を聞いてみると、
「契約書があまりにも隙なくできていて、何か起きてもすべて相手が責任を負うようになっています。それはそれでいいのですが、それを取引先に渡すと、『一体どういうつもりなの?』と嫌がられるんですよ。かといってしっかりと仕事をしてくれているスタッフたちになんて言えばいいか…。」
というご相談でした。

自社が絶対に不利益を受けないように、あらゆるケースを想定してリスクを取引先に負わせた結果、かえって取引先に対し、なんて自己中心的な会社なんだ、なぜそんなに敵対心を持っているんだと思わせてしまったのです。

契約書を作る側からすれば、自社を守ることが一番の目的ですから、ある程度内容が偏ってしまうのもやむを得ないですし、それ自体が悪いことではありません。
大企業同士であれば、互いに駆け引きすることを見込んでいたりするので、それが問題となることは少ないでしょう。
しかしそれがあまりに度が過ぎると、「すべて自社が正しくて、相手のことを考慮しない一方的な契約書」になってしまいかねません。
とくに中小企業の場合は、互いに顔が見える間柄であったり、人と人のつながりで保たれていることが多いので、そのあたりの配慮や力加減が必要です。

契約書のあるべき姿

このように、大企業間の契約書ではお互いにしっかりと要求を主張しあうことからスタートするため、自社をがっちり守る契約書から始めることはよくあることです。
しかし、互いの信頼関係がより重要になり、主張のぶつけあいをそれほど想定していない中小企業同士の契約では、初めからそういうスタンスで臨むと、なんて自己中心的な会社なんだと、かえってネガティブな印象を与えてしまうリスクがあります。

一体、契約書のあるべき姿とはどのようなものなのでしょうか。

契約書は、自社を守るためのものでありますが、
同時に、契約を結ぶ相手方との信頼関係を築くものでもあります。

契約後もずっと取引相手から信頼されてビジネスを続けられるとすれば、そういうビジネス環境が自社を守ってくれるわけで、契約書はそういう関係や環境を生み出すものでなければなりません。
そのためには、契約書は自社のことを守りつつも、お互いにとってフェア(公平)なものである必要があります。

今回のご相談のように、自社のことだけを考えて作られ、取引先のことを一切考慮していない契約書は、結果的には自社の信頼を損ね、自社を守ってくれない契約書になってしまいます。

あらゆるトラブルに備えることは大事なことですが、それだけで満足するのではなく、
今後、双方がともに気持ちよくビジネスを進めていけるフェアな契約書かどうか、再確認してみてはいかがでしょうか。

契約書作成の心得

ここで取引先から「自己中心的な契約書じゃないか」と受け取られてしまう契約書の例を、いくつかご紹介します。

ひとつは、以下のように取引先にすべての損害賠償責任を負わせる規定です。
「相手方に契約違反があった場合、あらゆる全ての損害(弁護士費用も含む)を相手方は負担する
といった規定です。
このような強い文言が契約書に記載されていることは実はよくあります。
ですが、このような条項が私の依頼者に送られてきたら、損害の範囲を削るよう、必ず修正を要求します。

また、一方の当事者の賠償責任は記載されているのに、もう一方の賠償責任については言及されていないこともあります。
これも一方的な要求であり、公平かつ対等に賠償責任を負う旨の規定にするよう、修正を申し入れます。

双方は今後、共にビジネスを行う関係になるのですから、お互いの契約違反にはお互いに責任を負うのがフェアで公平な関係といえます。
また、自社が相応の責任を負うことは、自社の順法精神の高さを相手に示すことにもなるので、取引先からの信頼度も上がり、そういう意味でも自社を守ってくれる役割を果たします。

そのため、契約書では、自社の利益を守るのと同時に、相手にも受け入れられる内容に定めることが必要となります。

私が契約書を作るときは、実際の取引環境や商慣習などを伺ったうえで、クライアント企業の「譲れるライン」と「譲れないライン」を明確にしたうえで契約書を作成します。

今回の話は、主に中小企業にあてはまるお話です。中小企業の顧問をメインとしている私は、契約書とは「お互いの関係を良好に保ちながら、自社を確実に守るもの」だと考えています。
ただ単に自社を守るためだけで完結する契約書は、本当の意味での契約書の役割を果たせません。
自社の契約書について疑問をお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひご連絡ください(^^)

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弁護士 波戸岡光太
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