販売代理店契約とは? 代理店契約と販売店契約の違いを解説します。

販売代理店契約とは?

販売代理店契約とは、特定の商品やサービスを作って販路を拡大したい売り手と、商品やサービスを販売して手数料や差益を得たいと考えている企業との間で結ばれる契約のことを指します。
販売代理店契約は大きく分けてエージェント方式(代理店契約)と、ディストリビューター方式(販売店契約)の2つがあり、どちらも販売と代金回収をするうえでの契約相手やその方法が異なります。

今回は、この販売代理店契約の仕組みやメリット、注意点をお伝えします。(以下では、商品とサービスをまとめて「商品」といい、その作り手・売り手を「メーカー」と呼びます。)

代理店契約と販売店契約の違い

【エージェント方式(代理店契約)】
エージェント方式の場合、エンドユーザーに商品を販売するのはあくまでメーカーとされており、販売代理店はメーカーの代理として取引に関わります。
メーカーは、商品の売上や利益を考慮して販売代理店に手数料という形でフィーを払います。
エージェント方式では、販売代理店は商品在庫を抱えなくてもいい反面、一商品当たりに得られる利益がディストリビューター方式よりも小さくなることが多いです。

●契約形態:メーカーとエンド間で売買契約
●販売代金:メーカーが決める
●在庫リスク:メーカーが負う

【ディストリビューター方式(販売店契約)】
ディストリビューター方式では、販売店がメーカーから商品を購入し、自ら価格を設定してエンドユーザーに販売します。
販売店の利益は購入時と売却時の商品価格の差から発生します。
メーカー側は、販売店に商品を売却した時点で売上が計上されるため、利益の予想がしやすいという特徴があります。
販売店側から見ると、エージェント方式より一商品あたりに得られる利益が大きい分、売れ残った際の損失が大きくなること多いという特徴があります。
もっとも、ディストリビューター方式においても、メーカーとの契約によって、商品が売れ残った際はメーカーに商品を返品してもよい場合と定める場合もあります。

●契約形態:メーカーと販売店間、販売店とエンド間で、各々売買契約
●販売代金:販売店が決める
●在庫リスク:販売店が負う

販売代理店契約のメリット

【メーカーにとってのメリット】
販売代理店は商品の販売力が強みですので、代理店独自の流通網を利用すれば、メーカーは自社商品の顧客を見つける新たな販路を拡大できます。
そして、メーカーは自力で販売活動を行う手間を省けるため、人件費を削減したり、自社の本業務に力を入れることができます。

エージェント方式であれば、販売価格の決定権限をメーカーが握ることができるので、値崩れを防げるというメリットがあります。(他方、ディストリビューター方式だと販売店の価格決定権限をメーカーが拘束・制約することは、独禁法上できません。)

【メーカーにとってのデメリット】
販売代理店がメーカーの想定とは違う販売方法や営業手法を取った場合に、商品やサービスのブランドに傷がついたり、信用が薄れたりするリスクが生じます。

【販売代理店にとってのメリット】
メーカーとの契約期間中は、商品の販売依頼を継続して受けられるため、売上げの安定化を期待することができます。
そして、メーカーや商品の認知度が高い場合、その信頼を得ている販売代理店として、自社の知名度や信頼度をアピールできる機会があります。

【販売代理店にとってのデメリット】
販売や営業の準備をそれなりにしていたのに、商品やサービスの品質が優れていなかった場合には、そのコストを回収できないリスクが生じます。
また、販売に一定のノルマが課されている場合には、それが長期的には一定の負担となってくることも考えられます。

販売代理店契約を締結する際の注意点

1.メリットとデメリットをそれぞれ吟味する

ここまでに述べたように、販売代理店契約書では、法的な側面のみならず、ビジネス上のメリットやデメリットをどれだけ見込めるかという視点が重要です。
ビジネスの見通しを立てることは容易ではありませんが、それでも想定できる範囲のことは、丁寧に吟味しておきましょう。

2.代理店方式と販売店方式とで大きく異なることを理解しておく

両方式は、名前が似通っていることもあり、その違いを意識しないままに契約締結に至ってしまう方が多いです。
しかし、契約形態や利益の取り方などが全然違うことはこの記事で紹介してきた通りですので、その違いを正しく理解し、とくに売買代金や手数料の設定、代理店に独占権を認めるかどうか、返品の可否など様々な面で、自信の認識や理解と違っている点がないか、確認を怠らないようにすることをおすすめします。

3.契約期間の長さや、契約終了後の取り決めも意識する

契約締結時は、当面のビジネスの成り行きに関心が向かってしまいますし、それはやむを得ないことです。
けれども、その契約をどのくらいの期間続けるのか、契約終了した場合にはどのような処理を互いにしなければならないのか、そこまで意識を働かせておく必要があります。

まとめ

以上のように、販売代理店契約書で注意すべきリーガルチェックポイントを整理しました。
私が日頃リーガルチェックのご依頼を受けることの多い契約書でもありますので、お困りの際はもちろん、念のための確認が必要な場合でも、お力になれれば幸いです。
リーガルチェックのご依頼は下記フォームからお問い合わせください。

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ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
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私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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