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カンカツがどこかって!?(契約書のうしろのほう)
取引先が代金を払ってくれない!
問い合わせをしても返事がない。内容証明を出しても相手は無視し続けるありさまだ。
これは債権回収に向けて裁判するしかないようだ。
証拠といえば、契約書も作ってあったから大丈夫。これがあるから、相手だってそうそう争ってはこないだろう。
備えあれば憂いなし。契約書作っておいてよかったなー。
そんな感じで債権回収に向けて裁判の準備を進めていたら、法学部出身の部下がひとこと。
「カンカツは大丈夫ですか?」
「ん?カンカツ?」
「はい。カンカツ。」
「「はいカンカツ」じゃなくて。カンカツってなんだよ」
「カンカツは管轄ですよ。当社は東京ですけど、先方は京都。東京で裁判できますかってことです」
「そんなもん、東京にきまってるだろ。なんでうちがわざわざ京都に行かなければいけないんだ」
「ま、そうですけど。契約書のうしろのほうに書いてないですか?」
「は?…契約書のうしろ、うしろ……、えーと、これか。〈第35条。管轄。本契約に関して甲乙間に生じる一切の紛争は、京都地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする〉……京都がなんだって?」
「あー、やっぱり。京都でしか裁判できないってことですよ」
「なんだよそれ。聞いてないぞ」
「聞いてないもなにも、書いてあるじゃないですか。それでもって、社長、ウチのハンコも押してあるじゃないですか」
「いや、そうだけど」
「いや、そうなんですよ」
管轄とは何か
こういうこと、実は結構あるものです。
債権回収では、自社が東京であれば、東京の裁判所で裁判を起こせるのが原則です。債権者の住所地にある裁判所が担当裁判所(=管轄裁判所)というのが民法上のルールです。
ところが、当事者同士が、別途書面で「裁判所はここだけにしましょう」と合意したら、それはそれで当事者が決めたのだから、当事者同士の合意を優先しましょうというのが、これまた民法上のルールなわけです。
そういうわけで、契約書では「管轄」の取り決めがなされている場合が多いです。
そして、だれだって自社の近くで裁判ができる方がよいですから、最初に契約書を作成する方が、自社に都合のよい裁判所を書いておいたりします。しかも管轄は契約のメインではないから、契約書のうしろの方にちょこっと書いてある程度です。
なので、契約書案をもらった方は、注意深くかつ根気よく最後まで契約書を読まないと、管轄裁判所が相手住所地であることに気づかずにサインしてしまうことがあります。
気づかなかったとしても、「この内容で合意しました」というのが契約書なので、後になって「知らなかった」は通用しません。
ここは意外な見落としどころなので、ぜひ注意しておきたいところです。
ですから、管轄裁判所が相手会社の住所地になっていたら、自社住所地にしてもらうとか、相手を訴えるときは相手住所地又は自社住所地にすると定めることで公平な規定にするとか、そもそも定めない(民法で定めるルールにする)とか、いくつかの選択肢が考えられます。
債権回収の場面でハードルにならないよう、ぜひ参考にしてみてください。
そうか、京都、行こう。もいいけどね(^^)
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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弁護士 波戸岡光太
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