Blog 最新記事
- 信念への共感が心をつかむ from『すごい傾聴』(良書から学ぶ経営のヒント)2024-11-15
- 「見て見ぬふり」はこうして起こる-コンプライアンス違反を防ぐための心理的アプローチ-2024-11-04
- コンプライアンス違反を防ぐ少数派の影響力2024-11-04
- アンコンシャス・バイアスがコンプライアンス違反を招く?-無意識の偏見と公正な職場-2024-11-04
- 「赤信号、みんなで渡れば怖くない」-コンプライアンスと集団的浅慮-2024-11-03
カテゴリ
カンカツがどこかって!?(契約書のうしろのほう)
取引先が代金を払ってくれない!
問い合わせをしても返事がない。内容証明を出しても相手は無視し続けるありさまだ。
これは債権回収に向けて裁判するしかないようだ。
証拠といえば、契約書も作ってあったから大丈夫。これがあるから、相手だってそうそう争ってはこないだろう。
備えあれば憂いなし。契約書作っておいてよかったなー。
そんな感じで債権回収に向けて裁判の準備を進めていたら、法学部出身の部下がひとこと。
「カンカツは大丈夫ですか?」
「ん?カンカツ?」
「はい。カンカツ。」
「「はいカンカツ」じゃなくて。カンカツってなんだよ」
「カンカツは管轄ですよ。当社は東京ですけど、先方は京都。東京で裁判できますかってことです」
「そんなもん、東京にきまってるだろ。なんでうちがわざわざ京都に行かなければいけないんだ」
「ま、そうですけど。契約書のうしろのほうに書いてないですか?」
「は?…契約書のうしろ、うしろ……、えーと、これか。〈第35条。管轄。本契約に関して甲乙間に生じる一切の紛争は、京都地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする〉……京都がなんだって?」
「あー、やっぱり。京都でしか裁判できないってことですよ」
「なんだよそれ。聞いてないぞ」
「聞いてないもなにも、書いてあるじゃないですか。それでもって、社長、ウチのハンコも押してあるじゃないですか」
「いや、そうだけど」
「いや、そうなんですよ」
管轄とは何か
こういうこと、実は結構あるものです。
債権回収では、自社が東京であれば、東京の裁判所で裁判を起こせるのが原則です。債権者の住所地にある裁判所が担当裁判所(=管轄裁判所)というのが民法上のルールです。
ところが、当事者同士が、別途書面で「裁判所はここだけにしましょう」と合意したら、それはそれで当事者が決めたのだから、当事者同士の合意を優先しましょうというのが、これまた民法上のルールなわけです。
そういうわけで、契約書では「管轄」の取り決めがなされている場合が多いです。
そして、だれだって自社の近くで裁判ができる方がよいですから、最初に契約書を作成する方が、自社に都合のよい裁判所を書いておいたりします。しかも管轄は契約のメインではないから、契約書のうしろの方にちょこっと書いてある程度です。
なので、契約書案をもらった方は、注意深くかつ根気よく最後まで契約書を読まないと、管轄裁判所が相手住所地であることに気づかずにサインしてしまうことがあります。
気づかなかったとしても、「この内容で合意しました」というのが契約書なので、後になって「知らなかった」は通用しません。
ここは意外な見落としどころなので、ぜひ注意しておきたいところです。
ですから、管轄裁判所が相手会社の住所地になっていたら、自社住所地にしてもらうとか、相手を訴えるときは相手住所地又は自社住所地にすると定めることで公平な規定にするとか、そもそも定めない(民法で定めるルールにする)とか、いくつかの選択肢が考えられます。
債権回収の場面でハードルにならないよう、ぜひ参考にしてみてください。
そうか、京都、行こう。もいいけどね(^^)
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。
経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。
私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。
また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。
経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。
波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
経営者に、前に進む力を。
弁護士 波戸岡光太
東京都港区赤坂3-9-18赤坂見附KITAYAMAビル3階
TEL 03-5570-5671 FAX 03-5570-5674