自分でできる債権回収のコツ

前回から始まった、インタビュー形式で法律に関する皆様の素朴な疑問にお答えするコラム。
第2弾は明日からでも役立つ債権回収のコツをお伝えします。
弁護士には、相手の心理状況を読み取り交渉を有利に進める能力が求められます。そんな私達が債権回収の場で使う交渉方法をお伝えしたいと思います。ちょっとしたことで効果が出るコツなので、身近なところで試してみてください。

―率直に聞きますが、債権の返済を求めるときのコツってありますか?

あります。基本的なことでいうとひとつ目は、頻繁に連絡をとることです。これだけで返ってくる確率がかなり変わってきます。

例えば、相手(債務者)から口頭で「1か月後に返すよ」と言われたとしても、次にこちら(債権者)が連絡するのは1か月ではなく、できるかぎりマメに連絡をとることが大事です。なぜなら、その時点では「返す」と思っていた債務者が、1か月という短くない時間のなかで気持ちが変わってしまうことはよくあるからです。にも関わらず、債権者の方は、1か月の間、債務者の気持ちが「返すよ」と言ったときと同じものだと思ってしまいがちです。
また、マメに連絡をとることで「この人はめんどくさい人だ。」という印象を与えることができます。めんどくさいというと良くないイメージを持つかもしれませんが、債務者にとってのめんどくさい人=後回しにしてはいけない人なので相手の対応が早くなるという効果があります。

ふたつ目は、ちょっとずつでも払ってもらうことです。

例えば、「3ヶ月後に300万円返すよ」と相手が言ったとします。その言葉が確かだとするなら1カ月後に手持ちのお金がゼロなわけはないですよね。そこで、「月末に100万円とは言わないから50万円だけでも返して欲しい」と言っておくことが大切です。

ちょっとずつ払ってもらうことは、債権の回収率を高めるだけではなく、債務者の精神面にも好影響を及ぼします。実は、一度でもお金を返すことで、債務者の心の負担が軽くなっていくのです。1円も返さないために、債務者の気持ちにずっとのしかかっていた「300万円」という金額が減ると同時に、心も軽くなっていくのです。

債権者の方からすれば、「債権は300万円だ。50万円ではなく一度に300万円返してくれないと気が済まない」と思われるかもしれません。確かに理屈のうえでは、債権者の方の手元には300万円があるべきなので、一度に全額払って欲しいという気持ちももっともです。でも相手の心の負担を取り除きながら辛抱強く回収するというのも一つのテクニックなのです。

―弁護士というと法律を武器に戦うイメージでしたが、人の心を読み取ることも大事なんですね。

弁護士のスタイルはひとそれぞれです。私は人の心を汲み取ってから方法を考えるべきだと思っています。払って欲しいのは「お金」ですが、関わるのは「人」ですから。

だから、ただ内容証明を出して、反応がなければ裁判を起こして・・・と機械的に進めるのではなくて、相手がどういう状況になったら払うのかを見極めながら対処法を考えていく必要があります。
また、相手がこちらのことをどう見ているのかも理解する必要があります。
先ほどもお話ししましたが、債務者は、”うるさいところ、面倒くさいところ”から支払いをしていくことが多く、そういった場合には”放っておくと面倒くさい相手”だと思わせる必要があります。
こうして相手のことをしっかり分析しながら、次の一手を考えていくのが債権回収の基本です。

―最後に―

今回の記事でお伝えした「頻繁に連絡をとる」「少しずつでも返してもらう」という方法は、法律の知識なしでも実行することができる債権回収の方法です。まずは、ご自身で試してみて、それでも埒(らち)があかないとお悩みでしたら、波戸岡にご相談頂ければと思います。

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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