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部下が上司にパワハラ?優越的な関係とは?

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
中小企業をもりたてるパートナーとして、企業理念や経営者の想い、事業を理解した上で法的アドバイス、対外交渉、リーガルチェックを行うことをポリシーとしております。これまでの法律相談は1000件以上。ビジネスコーチングスキルを取り入れ、顧問先企業の経営課題・悩みをヒアリングし解消するトリガーミーティングも毎月行っています。
パワハラというと、上司が部下に対して行うものというイメージがあります。
たしかに典型的なパワハラは、上司の部下に対するパワハラです。しかし、それだけに限られるものではありません。
法律上の定義では、パワハラとは「優越的な関係」を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものを指します。
つまり、優越的な関係とは、必ずしも上司と部下などの上下関係だけを指すわけではなく、状況によっては同僚だったり、部下から上司という関係においても成り立ちうるものであり、パワハラが成立しうるのです。
とはいうものの、部下から上司に対するパワハラといっても想像しにくいとも思いますので、具体的なケースをご紹介します。
CASE1 経験豊富な中途社員による上司へのパワハラ
社員が10名ほどの中小企業(A社)のケースです。
A社はこれまで総務を自前でやってきており、必ずしも大企業のように制度が整備されていませんでした。
ある時、A社に中途採用で年齢が社長よりも上の社員が入ってきました。
この社員は総務経験が豊富で、これまで大手企業を渡り歩いてきた経歴の持ち主です。
熱血タイプの人物ではあるものの、大企業で経験を積んできた自負から、「こんな状態で今までやってきたんですか。労務制度や契約書も全部見直さないといけないですね」などと、入社まもない時期から、上司にものを言うところがありました。
そのうちにその態度がエスカレートし、この社員は、自分しか処理できないような仕組みを総務に導入して、上司が仕事に口出しできないよう追いやってしまいました。
さらに、「あの人何もできないですから」などと社内で平然と上司の悪口を言い回るようにもなっていきました。
結果的にA社は、この中途社員抜きで業務の円滑な遂行を行うことが困難な状況となってしまいました。
これはパワハラの要件の一つである「優越的な関係」に該当します。
このような関係に基づいて上司を故意に貶めるような社員の言動がなされれば、部下からであろうとパワハラに当たるといえます。
CASE2 パートによる店長の無視
パート社員が大きな割合を占めるスーパーマーケットB店のケースです。
ある時、B店に新たな店長が赴任してきました。
店長が、「今日から私のやり方に従うように」という話を店員の前でしたところ、ベテランのパートを筆頭にパート社員たちが「何にも知らないくせに。いっそ無視しよう」と結託し、全く統制が効かなくなってしまいました。
その後も、パート社員は店長の指示に従わず、何かを言われても聞こえていないふりをして無視をし続けました。
結局、店長は精神的に病んでしまい出社できなくなってしまいました。
これも上下関係ではないところで起こるパワハラの一例です。
あたかも、先生の言うことを生徒が聞かず学級崩壊してしまったクラスのようなイメージです。
管理職側よりもパートやアルバイトなどの割合が圧倒的に多いような組織では「自分たちがいないと業務は回らないだろう」という認識から優越的な関係が生まれ、部下から上司に対するパワハラが起こりやすくなります。
過度にパワハラを恐れることで、第二のパワハラが生まれることも
ご紹介したような、部下から上司に対するパワハラが生まれる背景のひとつに、上司の、パワハラだと訴えられることへの過敏な恐れがあります。
つまり、「何かを言ってしまうとパワハラだと言われかねない」というパワハラへの過度な意識が組織の上下関係に歪みをもたらし、第二のパワハラを生んでいるともいえるのです。
よく勘違いされるのですが、上司が部下に対して「職位に基づいた指揮監督や教育指導」をすることはパワハラにはあたりません。
伝え方や振る舞いにもよりますが、業務を遂行する上で、言うべきことは言っていいのです。
パワハラを過剰に恐れてしまった結果、マネジメントが効かなくなり上記のようなパワハラが起こってしまいます。
会社はマネジメント層へのパワハラ抑止に注力しがちですが、業務上必要な指導や命令は行っていいとしっかり伝えることも必要です。
パワハラは上司が部下に行うものという固定概念を一度なくして、組織全体の円滑な運営に目を向けてみてはいかがでしょうか。
私も日ごろからマネジメントの観点を取り入れて中小企業のサポートをしておりますので、いつでもお問い合わせください。
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弁護士 波戸岡光太
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