パワハラの判断基準を持とう-新聞連載vol.3-

パワハラとは、①優越的な関係を背景とした言動であって ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより ③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素をすべて満たすものとパワハラ防止法に記されています。

このように、どこからどこまでが業務上必要かつ相当な範囲なのか明確に記されていない基準に対して、私たちはどのように対応していけばよいのでしょうか。今回は、パワハラにならないための判断基準をお伝えします。

厚労省が紹介するパワハラ6つの類型

厚生労働省は明らかにパワハラに当たる言動として、以下にあるように6つの代表的な類型を定めています。ここにあるような言動はパワハラに認定される恐れがあります。

身体的・精神的な攻撃はもちろん、仲間外れ、過大な要求、過小な要求、プライベート侵害などがこれに当たります。注意すべき例も記載していますので、参考にしてください。

【代表的な類型と注意すべき言動の例】
①身体的な攻撃
・叩く。殴る。蹴る。胸ぐらをつかむ。
・丸めた書類で頭をはたく
・書類を投げる。机をたたいて威圧する。

②精神的な攻撃
・みんなの前で、大声で繰り返し叱責する。
・「給料泥棒」「バカ」など人格を否定することを言う。
・他の社員をCCに入れてメールで罵倒する。

③人間関係からの切り離し
・挨拶をされても無視し、会話をしない。
・情報を与えない。送別会に出席させない。
・他の人に「彼の手伝いをするな」と言う。

④過大な要求
・終業間際に、終わるはずのない仕事を押し付ける。
・ささいなミスに対し大量の反省文を書かせる。

⑤過小な要求
・明らかに簡単で初歩的な仕事をひたすら命じる。
・特定の人にだけ、不必要な書類整理を繰り返し命じる。

⑥個の侵害
・交際相手の有無を聞き、過度に結婚を勧める。
・宴会や旅行への参加を強要する。
・私的な買い物や送迎をさせる。

組織のためか?誰が見ても適正か?

しかし、ここに記されている言動以外でも「コレってパワハラ?」と判断に迷うこと、ありますよね。そのようなとき、自分の中にしっかりした判断基準を持っていることが重要になります。

その判断基準とは、①目的が本当に組織のためであり、②指導方法は第三者が見ても適正かどうかということ。

パワハラに当たるかどうか判断に迷ったときは、その行動で本当に組織(関係性)がよくなるかどうか考えてみてください。怒りたいから怒ったということはないでしょうか?自分の価値観「だけ」に照らして行動を決めていないでしょうか?

また、その指導方法は、誰に見られても誤解されないかどうか、第三者の視点で自分の行為を客観視してみましょう。いちいち説明をしないと分かってもらえないようでは黄信号です。

常にこのような判断基準をもち、「あれ?」と思ったときに立ち止まれる軸にしてほしいと思います。
実際の裁判例を見ても、この2つの基準、「目的」と「手段」で判断されています。例えば、「目的」は指導監督のためと是認されても、「手段(態様)」が許容限度を逸脱して違法だと判断された裁判例は数多いです。ですから、訴訟になったとしても、この基準をしっかり持って行動していれば、パワハラ認定を防ぐことにつながるのです。

コミュニケーションを高める判断軸

パワハラを防ぐための2つの基準を軸に行動することは、自分自身の指導スタイルやコミュニケーションにも関わってきます。
組織のために適正な指導を行うことは、コミュニケーションの質の向上にもつながり、関係の質がアップします。ひいては、組織のパフォーマンスを上げることにもつながります。
ぜひ、パワハラ防止だけでなく、リーダーとしてあるべき姿を振り返るきっかけにしていただきたいと思います。

「生産性新聞」(2023年4月25日号・連載第3回)

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