相談を受けたときの対処法-新聞連載vol.7-

これまで、パワハラをしないための判断基準や言動についてお話してきました。
他方で、皆さまの中には相談を受ける立場の方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような時、どのような対応を取るのが正しいのか、今回はパワハラの相談を受けたときの対処法についてお話しします。

 ▶パワハラ相談対応の4ステップ

 パワハラは、当事者でなくてもチームや組織内で起きていることですから、会社としてきちんと対処しなくてはなりません。
ステップは4つ。①早期発見・早期対応、②安心して相談できる場の設定、③具体的事実のヒアリング、そして④パワハラ認定です。詳しく見ていきましょう。

 ①早期発見、早期対応

問題を解決するには「早期発見、早期対応」が重要です。ですが、第2回でもお伝えしたように、私たちには様々なバイアスが働き、小さな兆候を見落としたり軽視しがちです。
そのため、「今はまだ大ごとになってないから」と先延ばしにしにしてしまうことも少なくありません。
また、「あの人がパワハラをするはずない」、「誰も指摘していないから大丈夫でしょ」などと問題を軽く見て、対応が遅れることも…。
対応が遅れたことで問題が大きくなり、「なんでもっと早く相談してくれなかったんだ」、「もっと早く対応していれば…」となってしまわないよう、初期対応が肝心です。

 ②安心して相談できる場所の提供

相談者が安心して相談できる場を作ることも重要です。パワハラの場合、社内・組織内のことがほとんどですから、自分の言ったことが加害者や上層部、同僚など、知られてほしくない人に知られた結果、巡り巡って自分が不利益を被る立場になってしまうのではないかと不安に感じるものです。
萎縮効果が働いて「相談しても無駄なのでは」と思われては、問題は発覚せず深刻化することに。最低限、秘密を守ること、プライバシーを守ること、不利益を被ることがないことを確約し、安心して相談できる場を作ることが必要です。
その上で話を聞くとともに、匿名希望かどうか、開示してよい人の範囲はどこまでか、要望(環境改善か、懲戒処分か、異動か等)についても確認しておきましょう。
なかには「大ごとにはしてほしくない」というケースもあります。この場合、大ごととはどういうことなのか確認しましょう。話を聞いて欲しいだけなのか、それとも、加害者本人に注意をして欲しいのか、異動させてほしいのかなど、どのように対応して欲しいのかをヒアリングしおくことで、その後の対応が検討しやすくなります。

 ③具体的事実のヒアリング

そして、話を聞く際は、予断を持たず具体的なパワハラの事実をヒアリングしましょう。いわゆる5W1Hです。
「存在が目障りだと言われた」とか、「終業5分前に明日10時までの資料作成を頼まれた」など、いつ・どこで・誰が・何を・どのように、などを確認することが重要です。印象的な出来事は思い出しやすいですが、日常的な出来事ははっきり覚えていないことも多いでしょう。
具体的な話が出てこない場合は、「具体的になんと言われたの?」とか、「それはいつの頃?」などと、思い出すきっかけになる質問を投げかけてみましょう。

 ④パワハラ認定

 相談者の話は、親身に聞く必要があります。とは言え、相談者からの話を鵜吞みにしてしまうのも危いです。
パワハラかどうかを認定するには、加害者や周りの人からもヒアリングを行い、事実を確認する必要があります。
加害者はその事実を認めているのか、第三者が目撃しているのか、SNSのメッセージなど客観的な痕跡はあるかといったところから認定していくことになります。
もちろん、どこまで調査できるかは状況によって様々でしょうが、パワハラと認定されれば懲戒処分の可能性や場合によっては会社の責任が問われることもあります。
また、たとえ認定に至らなくても、相談があるということは、職場に良くない徴候が見られるということですから、なんらかの改善を行う必要があるでしょう。

 ▶パワハラ対応のNG言動

最後に、パワハラ相談があった際、とってはいけない言動についてお伝えします。

①「対応するする」詐欺

相談を受けたものの、すぐに対応せず放置すること。
相談者から問い合わせがあっても「今、対応してるから」などと、曖昧にしてしまっては「結局、何もしてくれない」と会社に対して不信感を持たれてしまいます。必ず、期限を区切って対応するようにしましょう。

 ②自分の経験や価値観の押売り

「俺の時代はもっと酷かったよ」、「君の成長を考えているからだよ」などと、自分の経験や価値観で話をすること。
昔の常識が今の常識であるとは限りません。このような対応は、相談者を追い詰めることにつながりかねません。

③上司が悪いと決めつける

相談者の話だけを鵜呑みにして、加害者を「パワハラしてるだろう!」と糾弾すること。
相談者に寄り添うことは大切ですが、事実を確認せず一方的に叱責しては、根本的な解決になりません。

ハラスメントの問題は対応を間違えると大きな問題に発展しがちです。ぜひ、早期発見、早期の正しい対応で問題が大きくなる前に解決しましょう。

「生産性新聞」(2023年8月25日号・連載第7回)

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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