契約書はない!でもこのメールやSNSは使える?

取引相手が代金を支払わない。なんとか支払ってもらいたいものだ。
しかし、、、契約書つくってなかった!
うむむ、、、悪いのは相手だというのに、これだと戦えないのだろうか。。。
契約書ってそんなに大事なのか。。。

たしかに契約書がないとつらいことが多いです。
運よく相手がこちらの言い分を「その通りです」と認めてくれれば、それを前提に交渉を進めることができます。
けれど「そんな契約知らない」と言われてしまうと、
「約束したじゃないか」
「そんなことありません」
「何言ってんだ。あのときOKって言ってたじゃないか」
「そうでしたっけ」と言い合いや水掛け論になってしまいます。
「だったら、でるとこでようじゃないか。真実はひとつ!」と息巻いて債権回収に着手したところで、その真実を知るすべはありません(ドラマの再現VTRじゃないので)。

それに対して、双方サインのある契約書があれば、互いが契約書に書いてある内容を理解して認めたという事実が残されているので、後になって「そうじゃない」とは言いにくいです。
そういう意味で、契約書は証拠の王様ともいえそうです。

契約書がないと何もできないか

では、代金回収では、契約書がないと何もできないのでしょうか。

「苦しいけれど、希望はある」というのが、私の考えです。

法律上は、お互いの意思(申込と承諾)さえ一致すれば契約の成立が認められており、契約書の作成が必須だとは定められていません(一部の契約を除く)。
あたかも隣り合うパズルのピースがぴたっとはまると、それだけで2人は離れられなくなる(契約に拘束される)のと似ています。
契約書は一つの紙に双方がサインして合意したものだから、まさにぴたっとはまったパズルピースそのものを表しています。

けれど、契約書でなくとも、メールや会話録音、その後の双方の言動などから、「これは契約が成立しているでしょう(=互いの意思が合致しているでしょう)」という事実が浮かび上がれば、それによって契約の成立を認めることも十分に可能です。
浮かび上がらせるためにいろんな事実や証拠を集めなければならないので「苦しい」。
けれど、あきらめずに前進できる可能性もあるので「希望はある」というわけです。

契約書がない場合にやっておくべきこと

契約書がなくても、メールやSNSでビジネスのやりとりをする場面は多いです。
そして、前述の通り、たとえ契約書を交わしていなくても(契約書を交わしているに越したことはありませんが)、トラブル時の証拠にできる場面は多いです。
では、メールやSNSのどのようなやりとりが証拠になるのか、逆に、どのようなものは証拠になりにくいのかを説明します。

証拠として効果的なメール・SNSのやりとりとは?

◎証拠として使える例

サービス・製品についての発注意思が確認できて、金額についても合意を得ている内容が書いてある場合です。
例えば、内容の明記された発注書をPDF添付して送り、先方から「発注書をいただきありがとうございます。品版、数量、金額について承知しました」というメール・SNSの回答があれば、十分に証拠として使えます。
このやりとりでは、「相手に何を依頼して、それに対していくら払うか」についての合意を確認できるので、契約書とほぼ同等の効力が認められるといってよいでしょう。
もっとも、この合意の内容が微妙になるのが以下のケースです。

◎証拠として使えるか微妙な例

見積書を添付したものの、「ありがとうございます」という返信が来ているだけの場合は、契約成立の証拠として使えるかは微妙です。
このやりとりでは、先方から「サービスの提示を受けたのは確かだが、その内容で承諾し、発注をお願いしたわけではない」と言われてしまうと、反論が難しくなってしまいます。
というのも、「ありがとうございます」というのは、提案に対するイエスではなく、“見積書を送ってもらったことに対する挨拶“にすぎないからです。

こういうときは、無理にこの証拠を持ち出して主張を振りかざすのではなく、
提案に対するイエスを確認できるようなやりとりを続け、それを残しておくべきでしょう。

◎証拠として効果的なメールやSNSを残したいときの、おすすめコミュニケーション術

トラブルが顕在化していない段階であれば、合意の確認をとれるようなメールを続けて頂きたいという話をしました。
けれど、その際に「言質を取りたい」という気持ちが表に出すぎると、どうしても“威圧感を感じさせる文章”だったり、契約書然とした”堅苦しい文章“になりがちです。

相手としては、そんなメールを受け取れば、かえって姿勢が頑なになってしまい、疑心暗鬼の状態が生まれて逆効果となる場合もあります。
実際、発注金額に対する合意を取ろうとして、高圧的かつ一方的な通告のようにみえるメールを送ってしまった方がいました。
相手も感情を荒立ててしまい、だったら1円も払わないなどと言い出し、困り果ててご相談いただいたケースもあります。

ですので、先方とのメールでのやり取りには慎重さが必要です。
基本的には、物腰は柔らかく、相手がイエスと言いやすい伝え方をするべきです。

私は、ご相談者が作成したメール文を送信前にチェックさせて頂き、相手との交渉が上手く進むような文章になっているか、きちんとした証拠になりうる文書になっているかという観点からアドバイスや加筆修正をさせて頂いています。

経営をしていると、とくお金に関するトラブルは一刻も早く解決したいですし、自社にとって有利な状況をいち早く作りたいと、つい結論を急ぎがちです。
もちろんその状況は十分に理解できますが、一方で、そのメールの目的は“自社が納得できるレベルで相手との合意に至ること”ですので、慎重に、それでいて気持ちよく相手を促し、双方が納得できる状況を作っていきたいです。

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2021.8.24更新

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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