フランチャイズ契約書のリーガルチェックポイント

企業がサービスや商品を販売する場合に、フランチャイズ加盟店となることで、一定のブランドやノウハウを導入することができ、そこにメリットを感じてフランチャイズ契約を結ぶことが多く行われています。
加盟店になることで、実際に利益が上がっていけばいいですが、そうでないケースも珍しくはありません。
そこで今回は、フランチャイズ契約書のリーガルチェックポイントとトラブル事例を整理しました。

1 提供されるノウハウ・ブランドの真価を吟味する

契約書チェックと言いながら、契約書だけ見ても分からないのが、提供されるノウハウ・ブランドの真価です。
導入する以上、自社の増収増益に貢献するノウハウ・ブランドでなければ意味がありません。
それなりのロイヤリティ(代金)を払ってまで導入する価値のあるノウハウ・ブランドなのか、宣伝文句だけをうのみにせず、その真価の吟味に労力をかけることは惜しまないようにしましょう。

2 スタッフの研修指導とスキル向上が実現可能か吟味する

導入する商品やサービスの提供にあたって、スタッフの教育研修やスキル向上を必要とする場合、そのためにかける時間は確保できるのか、また、本部から派遣される指導員の指導力は十分かを吟味しなければなりません。
これも契約書だけを見ても分かるものではなく、日々の業務の中で、その内容を実施していくことが可能かという観点でチェックする必要があります。

3 ロイヤリティとして実際にいくら払うことになるのか確認する

ロイヤリティは、「◎◎の何%」という定め方が一般的です。
この文言だけを見ても、毎月いくらの支出となるのかはイメージがしにくいです。
売上金が入金されたらそこから捻出することで足りるのか、売上金が入る前に支出が必要になるのか、その金額はいくらなのか、具体的な金額を把握して、日々の資金繰りに支障をきたさないようにチェックしましょう。

4 中途解約の規定を確認する

多くの契約書では、契約期間は長く定められ、中途解約する場合には、何か月も前に通知しなければ解約できないようになっています。
いざこれから契約を結ぼうというときに、中途解約のことを考えるのは荷が重いかもしれませんが、備えあれば患いなし。抜かりなく確認しておきましょう。

5 契約終了後の競業禁止規定を確認する

導入したノウハウやブランドに魅力を感じなり、他社のノウハウやブランドに切り替えようとしても、「契約終了後◎年間は、同内容のフランチャイズ契約を結べない」という規定が定められていることが多いです。
これも3と同様、そこまで意識がまわらずに契約を締結してしまい、後になって気づくことが多いです。抜かりなく確認しておきましょう。

フランチャイズ契約で起きやすいトラブル

フランチャイズ契約を交わして開業したものの、トラブルが起きることで想定以上に損害やダメージが大きくなることも珍しくありません。
以下では、その主な具体例をご紹介します。

トラブル1.現実の売上が、想定の売上を大きく下回る

勧誘や説明を受ける段階で示された売上や経費の予測をめぐって、フランチャイズ本部の見通しが甘かったために、実際に開業したものの、現実の売上や利益が想定に遠く及ばないことがあります。

当初の事業計画書に提示された見込金額よりも実際の売上が大幅に足りていないわけで、これは、見込み顧客のリサーチや立地周辺の商圏分析が不十分だと起こりやすい現象です。

ですので、本部が事前に示す資料だけを頼りにするのではなく、自身でも同業他社と比較したり、可能であれば他の加盟店から話を聞いてみるなどして、想定の数値をより厳格に吟味するようにしましょう。

トラブル2.加盟金が返ってこない

フランチャイズ契約を交わすと、本部に対して、最初に加盟金を支払うことがほとんどです。
それなりに多額であることが多いですが、今後の長い付き合いを考えて思い切った投資をすることになります。

ところが、いざ始めた後で、やはり思い直してフランチャイズ契約を解消したくなった場合、この加盟金は返ってこないことがほとんどです。
契約書に明記されていることを、返金を求める段階になって気づく方も多いです。

契約締結時は気持ちが高ぶっているので、後日の撤退などのネガティブなことは想像したくないかもしれませんが、「もしやめることになったら戻ってくるお金なのか」ということを、契約書を丁寧にチェックしておきましょう。

トラブル3.本部のサポートがない

契約書では、本部のサポート体制がうたわれていても、いざ契約が始まったら、通りいっぺんのことしかしてもらえず、本文との関係性が形骸化してしまうこともままあります。
そうすると、毎月のロイヤリティも、何の対価なのか分からなくなってしまうかもしれません。
ですので、本部の支援体制やサポートの具体的内容や頻度を、予め丁寧に協議やヒアリングをしておき、「多分大丈夫だろう」という甘い見込みをもたずに、信頼できる本部かどうかを確認しておきましょう。

トラブル4.近隣に同じ加盟店や同種店舗が開業した

フランチャイズ契約書では、「テリトリー制度」といって、加盟店の店舗から一定の範囲内では同じフランチャイズ店を開業させないことを定めていることが多いです。

もっとも、これも契約書に明記されているから拘束力が発生するので、フランチャイズ契約ならば当然、というものでもありません。ですので、テリトリー制度が契約書に明記されているかどうか、事前に確認しておきましょう。

また、同じフランチャイズでなくても、同業他社が近隣に出店する場合もあるでしょう。
そこまでの禁止を契約書に盛り込むことは不可能ですが、そういう可能性も含めて、事前の商圏分析はぬかりなく行っておきましょう。

トラブル5.競業避止義務にしばられる

加盟店がフランチャイズで行っている事業と同一又は類似の事業を行ってはいけないというしばりとなるのが競業避止義務です。
このしばりは、フランチャイズ契約期間中はもちろんですが、契約終了後も一定期間、同一又は類似の事業を禁止することが契約書に定められていることが多いです。
これも契約締結時には、契約終了後のことを考えずにサインをしてしまい、後々になってこのしばりに苦しめられることも多いので、事前のチェックと協議が必要です。

トラブル6.違約金が膨大となる

期間途中でフランチャイズ契約を終了させようとすると、一定期間分又は残りの期間に対応するロイヤリティを一括で払わなければいけなくなるなど、想定以上の違約金が発生する場合があります。
そうなると、何の対価性もないものにお金を支払うという、ただ資金を失うだけの事態を招きかねません。

契約締結前であれば、違約金の有無や増減額の協議をすることも可能でしょうが、契約締結をしてしまった後だと、その条項によって有利な立場に立つ側が強気で交渉に臨んできて、契約書通りの履行を求めてくるのが通常です。
ですので、ここでも後になって不利な事態に気づくのではなく、予め契約締結前に、違約金の有無及び額について、しっかりと協議をしていくことが必要です。

まとめ

以上のように、フランチャイズ契約書で注意すべきリーガルチェックポイントとトラブル事例を整理しました。
契約書に書いてあることを実際に導入した場合に、自社の利益に結び付くのか、結び付けられるのか、といったリサーチや予測が要になるというのが、この契約の特徴です。
リーガルチェックのご依頼ご相談も受け付けていますので、その場合は下記フォームからお問い合わせください。

2023.3.12更新

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私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

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波戸岡 光太 (はとおか こうた)
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