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製造委託契約書のリーガルチェックポイント

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ
中小企業をもりたてるパートナーとして、企業理念や経営者の想い、事業を理解した上で法的アドバイス、対外交渉、リーガルチェックを行うことをポリシーとしております。これまでの法律相談は1000件以上。ビジネスコーチングスキルを取り入れ、顧問先企業の経営課題・悩みをヒアリングし解消するトリガーミーティングも毎月行っています。
自社製品として開発と販売は自社で行うものの、物の製造は外部の製造会社に委託する場合、製造委託契約が結ばれます。
どのような仕様のものを製造するのか、検品はどのように行うのか、ノウハウの流出は起きないかなど、注意すべき点が数多くあります。
そこで今回は、製造委託契約書のリーガルチェックポイントを解説します。
1 製品の仕様について定める
どのような製品を製造してもらうかは仕様書や規格書にて定め、製品が満たさなければならない品質や性能・機能などの要求事項はそこに記載することになります。
実務上、製造会社と相談しながら進めることもあるでしょうが、求めるレベルや内容の製品に仕上がっているかどうか、後々もめないためにも、仕様書では明確に要求事項を盛り込むようにしましょう。
また、後日、仕様変更の可能性がある場合は、どのような手続きで仕様変更が可能となるのか定めておきましょう。
委託者(発注者)にとっては、一方的指示で仕様変更をできるようにしておきたいでしょうし、受託者(製造者)にとっては、双方の合意の上で仕様変更が行われるようにしておきたいところですし、変更に伴い費用変更がある場合はそのことも定めておきたいです。
2 検品(検収)と契約不適合責任(瑕疵担保責任)について定める
製品納入後には、検品(検収)を行い、仕様書や規格書での要件を満たしているかを確認する必要があります。
そのための期間として、納品後「◎営業日以内」として明確に期間を定めるのか、「速やかに」という程度で明確な期間を定めないのか、確認しましょう。
発注者としては、明確な期間を定めないか、定めるとしても検査のために十分な期間を設定したいところですし、製造会社としては、明確に期間設定を求めたいところです。
次に、検品を行ったとしても、気づかない欠陥や不具合が後日判明することがあります。
それに備えた規定が契約不適合責任(瑕疵担保責任)です。
2020年4月から施行された改正民法では、「瑕疵」という用語がなくなり、「契約不適合」(=契約の内容に適合しないもの)という用語が用いられるようになりました。
改正のポイントは次のとおりです。
①欠陥品だとか、契約で定められた品質を満たさない「契約不適合」品の場合は、修理(履行の追完)、代金の減額、損害賠償、契約解除といったメニューが一定要件のもとで認められる。
②①の責任追及は、「注文者がその不適合を知った時から1年以内に通知」すればよい。
もっとも、これはあくまで契約書で何も定めがない場合に適用される規定ですので、契約書において別途、欠陥や不具合についての担保や保証規定を定めておくことができます。
例えば、責任を負う期間については、「知った時から」ではなく、「納品時」とか「検査合格時」から1年とか6か月などと定めることで、製造者が責任を負う期間を明確にしておくことができます。
また、単に責任を負う負わないだけでなく、いつまでが無償対応で、いつからが有償対応なのか、という定め方も検討するとよいでしょう。
そうすることで、双方にとって、引渡後の不具合対応でもめるリスクを減らすメリットがあります。
3 再委託の可否について定める
製造を行えるのが、契約当事者である製造会社に限られるのか、そこがさらに下請けに製造を再委託できるのかを定めておきましょう。
一律NGにするのか、委託者(発注者)の事前の承諾がある業者であればOKとするのか、一律OKとするのか、製品の特質や当事者同士の信頼関係に応じて設定することになります。
そして、一律OK又は承認があればOKという場合、発注者と再委託先とは直接の契約関係には立ちませんが、契約をした製造会社と同じ義務を負うように設定し、再委託会社の責任=契約当事者の製造会社の責任となるように定めておくのが、発注者にとっては安心材料となるでしょう。
4 立ち入り調査について定める
発注者としては、製造会社がしっかりとした製造体制を備えて製造しているか、自らの目で確認したいところです。
そのために、必要に応じて製造会社の工場や倉庫、事務所に立ち入れるようにしたいところです。
もっとも、製造会社としては、とはいえ他社の人間が一方的に立ち入ってくるのは避けたいところです。
「正当な理由」があれば一方的に立ち入れるように定めるか、「合意」のもとに立ち入れるように定めるか、調整が必要なところです。
5 知的財産権について定める
発注者としては、仕様書や規格書に記載された内容や製造方法は、自社にとって大切な無形資産です。
それらは特許権や著作権として法律上保護された権利の場合もあれば、そこまで至らなくとも価値あるノウハウとして、しっかりと守りたいところです。
守秘義務をはじめ、外部への情報流出を禁じる規定はもちろんのこと、製造会社自身がそれを使って自社内流用しないよう、禁止事項を取り決めておくことが必要です。
6 支給品について定める
製造委託契約の中には、発注者が原材料や部品、梱包材等の支給品を提供する場合もあります。
その場合は、製造会社が発注者の指示に従って、その支給品を取り扱うように定めておく必要があります。
以上のように、製造委託契約書で注意すべきリーガルチェックポイントを整理しました。
自社のノウハウをしっかり守りつつ、良好なパートナー関係を築いて、良質な製品を販売できるようにしていただきたいです。
リーガルチェックのご依頼ご相談も受け付けていますので、その場合は下記フォームからお問い合わせください。
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弁護士 波戸岡光太
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