契約書がない!そんなときはこうします。

私は東京港区にて中小企業の顧問弁護士として日々取り組んでいます。
中小企業の法務トラブルというと、「契約トラブル」「債権回収トラブル」「労使トラブル」の3つが筆頭に挙げられます。
今回はその中でも多くのご相談をいただく「契約に関するトラブル」について、実例をもとにご紹介します。

信頼していたら・・・「契約書がない!」

A社は造花の装飾を行う会社で、イベント会社のB社と一年ほどの付き合いがありました。
社長同士も顔なじみで、これまでに何度も一緒に仕事をしたことがあり、これといった契約書を交わさず、現場が終わるごとに請求書を送って代金を振り込んでもらうという関係を続けてきました。

今回のケースも、B社から「自社主催のイベントがあるので装飾を手伝ってほしい」という相談があり、A社はいつものようにこれを快諾しました。

その案件はイベントまで期日が迫っており、あまり余裕がありませんでしたが、A社はなんとか装飾を終えて納品することができました。

その後A社はいつもどおりにB社に請求書を送ったのですが、B社は請求金額の割引を要求してきました。
イベントの来客数が目標数に達しなかったからなのかも知れません。
A社はB社との付き合いを考えて、厳しい時はお互い様だからしょうがないと、この割引を受け入れることにしました。
B社からは「来月末に振り込みます」との連絡が入りました。

しかし期日になってもB社は請求金額を振り込んできませんでした。

送金もれかと思ってA社が連絡したところ、B社は、突如、
「こちらがお願いした通りに装飾がされなかった」と言い出し、A社への支払いを拒否してきました。
予想外の事態に慌てたA社は、私のホームページをご覧になり、ご相談にいらっしゃいました。

注意すべき点とは

今回A社がこうした事態に陥った原因は、主に2つありました。
1.それまでの付き合いを信頼しきって、契約書なしで仕事を進めてしまったこと
2.納期の関係で急いでほしいと要求され、十分な確認を取らずに仕事を進めてしまったこと

契約書がない場合のトラブル解決

契約書がない中、まずは問題の全体像をつかむため、私はこれまでのやり取りを全て時系列順で再現することから始めました。

そのために、やりとりしたメールやLINE、業務メモ、取り交わした請求書など全ての資料を送ってもらいました。
A社の要望を実現するためには、B社に支払義務があることを証明する資料が必要だったため、メールやLINE、書類のやりとりなどから、契約書に代わってこれを証明する証拠があるかどうかを精査しました。

その中で
1.展覧会中には装飾品の不具合や修正依頼の連絡はなかったこと。
2.展覧会直後は、B社は支払う意向がある旨の返信メールを出していたこと
が判明しました。
これにより、契約書がなくてもA社とB社間には契約が成立しており、B社は減額後の請求金額を認めていた判断しました。

後日、裁判になって、これらを証拠として提出したところ、
A社が提供した商品に不具合があったのかという争点に関して、
・開催期間中に不具合に関する連絡はなかったこと
・開催期間後にB社は代金支払いの意思を示したこと
・その後だいぶたってからB社は装飾の不具合に言及し始めたこと
が事実として認定され、装飾品に不具合があったとは推認できず、B社には支払義務がある、という裁判所の判断を得ることができました。
こうして、最終的にB社から請求金額満額の支払いを得ることができました。

A社からは、
「いい勉強になりました。今後は全ての案件で契約書を事前に交わすようにします」
とお話を頂き、私の方で契約書作成を行い、その後も顧問弁護士として日々のサポートをさせて頂くようになりました。
いちど契約書をしっかりと作っておき、どんな案件でも契約書を取り交わすことをルーティンにしてしまえば、それほどの業務負担にもなりませんし、いざというとき契約書が自社を守ってくれる体制が整います。

まとめ

今回のケースのように、契約書がなくても、やりとりを掘り起こすことでトラブルを解決することは十分可能です。
しかし、契約書があれば、こじれずに早く解決できることが多いのも事実であり、契約書を準備しておくことの重要性をお分かりいただけたかと思います。

今回のような、
「今までトラブルなく付き合っていたから大丈夫だろう」とか「知り合いの紹介だからまさかね」などといった正常性バイアスは、トラブルを大きくしてしまう判断ミスにつながりかねません。
※正常性バイアス…自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性。

もし、「うちは大丈夫でしょ」という言い訳を自分自身に使っている場合は、
「本当にそうだろうか」と立ち止まって、顧問弁護士に相談したり、あらためて取引を見直してみる勇気も必要です。

顧問弁護士として私ができること

私は顧問弁護士として、起きてしまったトラブルを解決することよりも、そもそもトラブルが起きない体制を作ることに注力しています。

今回のケースでは、その後A社様から顧問弁護士として、新規取引を始める前にご相談をいただけるようになり、契約トラブルの多くを未然に防ぐことができるようになりました。

企業活動をしているとトラブルは付き物ですが、同種のトラブルは繰り返さないよう、今後に備えることは非常に重要です。
あらゆるトラブルに関して、予防対策が不十分だと感じられている企業様はぜひ一度ご相談ください。

私は、経営に関する戦略から何気ない日常のお話まで伺える、中小企業経営者様の信頼できるパートナーとなりたい、よき理解者でありたいと思っています。
法律問題が起きた時に相談できるエキスパートとしてはもちろん、日ごろから「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」と思ってもらえるような存在として、顧問弁護士という選択肢をお考えいただけたらと思います。

リーガルチェック、契約書作成のご相談フォーム

ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
少しだけ自己紹介にお付き合いください。
私は企業の顧問弁護士を中心に2007年より活動しております。

経営者は日々様々な課題に直面し、意思決定を迫られます。
そんな時、気軽に話せる相手はいらっしゃいますか。

私は法律トラブルに限らず、経営で直面するあらゆる悩みを「波戸岡さん、ちょっと聞いてよ」とご相談いただける顧問弁護士であれるよう日々精進しています。
また、社外監査役として企業の健全な運営を支援していきたく取り組んでいます。
管理職や社員向けの企業研修も数多く実施しています。

経営者に伴走し、「本音で話せる」存在でありたい。
そんな弁護士を必要と感じていらっしゃいましたら、是非一度お話ししましょう。

ご相談中の様子

波戸岡 光太 (はとおか こうた)
弁護士(アクト法律事務所)、ビジネスコーチ

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弁護士 波戸岡光太
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